非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

新入社員

掃除のバイトの現場は2ヵ所で、ひとつは月曜から金曜に大きいターミナル駅に近いオフィスビルの現場と、あとひとつは土曜日にこぎれいなテナントビルの清掃をしている。

2つの掃除の現場は、同じ清掃会社の現場である。
この会社は社員が150名ぐらいいるので、清掃会社としては大手になるんだろうか。

オフィスビルの清掃は、一人現場なので慣れれば気が楽だ。
しかし、土曜のテナントビルの清掃は、曜日や時間帯によって交代制で、その上長く働いている女の人たちが多いので、メンドクサイ。
女性は全員アルバイトで、年齢は30代から70代と年齢層が幅広いが、年齢層は高い。
テナントビルには常勤の責任者の男性が一人いて、清掃会社の社員だ。

清掃の現場はこの常勤以外は男も女も全員非正規労働者なので、人手が足りない時は、本社勤務の男性社員が来る。
その本社の社員に話を聞いていたら、やっぱりこの会社もブラックだった。
会社の就業時間は9時から6時半までだが、実際は朝6時半とか遅くとも7時には現場に行く。
その後、他の現場に行ったり、営業などをこなし、会社に帰って見積もりや連絡業務をこなし、6時半に退社である。
毎日ほぼ11時間か12時間労働であるという。
残業をしないのは、しても切りがないこと、さらに朝早いので8時9時まで残業などとても体がもたないからである。

1日12時間近く働いてそれに見合う高額の給与をもらっているんだろうか。
その人は正社員で40代のサラリーマンなので、役付きにして残業代は出さないのかもしれない。
職場にもよるのかもしれないが、私から見ても日本のサラリーマンは労働時間が長いと思う。
その社員に、労働時間を短縮するにはどうしたらいいですか?と聞くと、人手を増やして朝番と遅番に仕事を割り振ることだという。
しかし、内心は不満には思っていても、改善しようという気はないらしい。
経営者側から見れば労働者が増えればその分社会保険料などの負担が増えて、経費がかさむ。
だから経営者はなるべく社員は増やしたくないのだ。

一方、テナントビルに常勤している矢代さんは50代前半の正社員だ。
仕事は朝7時から午後4時勤務で、昼12時から1時まで休憩になる。
一日8時間労働で、曜日は決まっていないが、ほぼ週に2日は休みが取れる。
矢代さんは、この現場常勤が条件で入社したので、現場が変わるようであれば、辞める、とまできっぱり言っていた。
いくら給与が上がっても、1日12時間労働などまっぴらなのだろう。
しかし、朝の清掃は7時はじまりでは間に合わないので、6時半には出社して、一日30分の早出はサービス残業である。

日本人は勤勉でまじめなので、自分の時間を削って早出したり、サービス残業をする。
それを経営者は見て見ぬふりをしているんだろう。

そんな清掃会社に22歳の新入社員が入ってきて、今はそのテナントビルの現場で研修をやっている。
小柄で痩せている体に、化学繊維の作業ズボンを腰パンで履いているので、作業ズボンがやけにズルズルと引きずるような感じでだらしない。

矢代さんがその新入社員を紹介した時に、
「今は研修中だけど、本社勤務だから将来の幹部候補生だよ。」
と言ったので、つい
「そう、そのうち1日12時間労働させられるようになるんですね。」
とポロリと言ってしまった。
それを聞いて、その青年の顔が引きつっていた。

清掃の仕事は需要は多いが、元請け、1次下請け、2次下請けの孫請け、さらには3次下請けがあり、上から順に手数料を抜かれるので、末端の労働者の賃金が低い。
だから若い人は募集をかけても来ないので、年寄ばかりなのだ。
さらに現場によっては体力勝負というより作業の手順を覚えることが多いので、60を過ぎると人にもよるが仕事を覚えられないという。

22歳の新入社員の上に高卒で入って3年目になる21歳の青年がいて、その上は39歳の社員である。
前は33歳の社員がいたが、辞めてしまったらしい。
清掃会社は完全なブラックなので、若い人は続かない。
今までアルバイトしかしたことのない、この新入社員は続くんだろうか。

矢代さんは裏でこっそり、「あんまりキツイことを言うと辞めちゃうので、長い目で育てるんだよ。」と言っていた。