非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

貧乏は気力、体力を奪う。

結局、もう2社面接が決まっていたが、先に面接に行ったところが面接を受けてすぐに採用になったので、そこに決めることにした。

その清掃の現場は、某大手流通会社の大型店舗である。
と言っても、大手流通会社といえば、日本では数社しかないので、ちょっと細かいことを書けばきっとわかってしまうだろう。
一応、アルバイトでも秘密保持の契約書を書かされているので、あまりはっきりとは書けない。

仕事は、朝8時から午後5時までで、9時間拘束、1時間休憩で、8時間労働である。
今までの清掃は、大体4時間とか5時間だったので、8時間というのはものすごく長く、仕事が終わるとヘトヘトに疲れてしまう。
会社員で働いていた時は、こんな長時間働いていたのかと、今更ながらに驚いてしまう。
この8時間労働というのが、月、火、水と3日続き、休みの木曜日になると、睡眠不足と筋肉痛で疲労困憊である。
さらに金曜は同じ店舗で夕方4時半から10時まで。
5時間半のシフトの時は30分の休憩である。

この大型店舗の清掃で、週に29時間労働になるので、社会保険に加入することになった。
最初に面接を受けた時に、希望する時間と曜日を伝えると、週に20時間を超える労働の場合は社会保険に加入することになる、と言われたからだ。

これで毎月滞納している国民年金の催促の手紙や電話、非正規労働者と思われる年金職員による催促の訪問から逃れられるので、ちょっとホッとした。

研修で仕事を教えてもらった角田さんは、65歳の女性だった。
彼女の話では、最初に仕事を教えてもらった人は、その現場の責任者だった。
ところがその責任者という女性は、その現場では一番年下で、さらにその人もアルバイトの女性だったそうだ。
はっきりモノを言う人だった、といえば聞こえはいいが、口の聞き方を知らないというか、かなり失礼な言い方をしていたので、他の清掃のパートの人たちからはかなり嫌われていたらしい。
事務所にある洗濯機を他の現場の人が使おうとすると、とても失礼な言い方で断ったりしたそうだ。
それでクレームになり、結局他の現場に行ってしまった。
角田さんはその人から研修を受けていたが、2回の研修後、「私、今日でこの現場の仕事は終わりなんです。」と言われびっくりしたそうだ。

他のパートの人も、「この現場を辞めても他で雇ってくれるんだから、やっぱり人手不足なんですね。」と言っていたが、言外にあんな人がクビにならないでいるのが不思議だ、と言いたいらしかった。
失礼なものの言い方と相まって、いつも事務所にいて仕事をしなかった、というのも多くの清掃の人達の不満の一つだったらしい。
しかし、責任者になると、本社の連絡や細々とした事務仕事があるので、それも仕方のないことだったのではないか、とも思う。

みんなは辞めてヤレヤレ、と思っていたらしいが、その後1ヵ月後ぐらいは責任者がいなかった。
だから、この現場はものすごく荒れた現場である。

表の店舗は、深夜11時から早朝7時まで本清掃をするので、一応きれいだが、その裏のバックヤードと言われる清掃の事務室や従業員トイレ、従業員用の廊下、階段はかなり汚い。
これで良く店舗側からクレームがつかない、と思うぐらいだったが、他の店舗から来た人に言わせると、こういった業態の店舗ではよくある話らしい。

新しい現場の仕事が週に29時間とやめよう辞めようと思いながら続けている、土曜日だけのテナントビルの清掃の現場が4時間労働なので、週にして33時間労働ということになった。
今まではオフィスビルの清掃は、月曜から金曜まで、毎日3.5時間、さらに土曜のテナントビルの清掃が4時間、週に14.5時間労働である。
時給1100円として、ざっと計算し、さらに社会保険料を多めに2万控除されると考えても、月に約4万から5万ぐらいはは収入が上がると思われる。

簡単に言えば、労働時間が増えたので、収入が増えただけの話。
その分自分の時間は減って、さらに労働時間が増えたから、やはり体もしんどい。

それでも月に4、5万円の増収は大きい。
仕事を教えてくれた角田さんは、今年65歳になり、年金受給者となった。
顔立ちも細面で、扁平な体つき、話し方もおっとりとして、穏やかなその顔立ちや姿や立ち振舞から、ごく普通の専業主婦に見える。
しかし、あまり細かい事情は話さなかったが、彼女は離婚して子どもたちは独立し、自分ひとりで暮らしているという。
年金も今年からもらえるようになったが、仕事が決まり、毎月まとまった収入が増えるので、貯金もできるし、社会保険と年金に加入出来て、本当に良かったと言っている。
結婚生活が何年だったのか分からないが、どう考えても家庭と仕事を両方をバリバリこなして来たようには見えない。
支給される年金額はどれくらいだろうか。
平成20年度から離婚分割ができるようになったが、そんなに高額とも思われない。
年金がたとえば5万だとして、バイト代が月額15万ぐらいになるので、月収は20万ちょっととすれば、女1人住まいなら何とか貯金ぐらいはできる金額かもしれない。
経済的な不安から解消されたので、夜も良く眠れるようになったという。
だから、この職場でずっと働きたいそうだ。

その気持ちはよくわかる。
よく人は、幸せはお金ではない、と言うが、年収1000万円以下の人の場合は、年収と幸福度の度合いはほぼ比例する、と言われる。
結局はお金、なんである。

収入がどうも5万円ぐらい増えるらしい、と、やはり現金なもので、あれが買いたい、これがしたい、と思うようになった。
今まで収入がものすごく少なかったので、なるべくモノは買わず、とりあえず今あるものをずっと使いまわす、ということにしていた。

ところがある時、街を歩いていてショーウィンドウに映る自分の姿をみて、あまりに貧相な身なりだったのに驚いてしまった。
正直に言えば、身なりに関しては、ほとんど構わなかった、と言っていい。
そして、自分の回りの人や街で歩いている人たちの身なりを改めて見てみた。

バイト先のダブルワークの人でさえ、高価なモノを身に着けているわけではないが、それなりに身なりにかまっている。
毎週土曜日にしか合わない彼女は、シングルマザーで、3人の子の母親で、この早朝のバイトの他に週に5日は1日8時間の清掃の仕事もしている。
街中の人たちを見ていても、やはりそれぞれの収入に合わせて、自分なりに身なりや持ち物を吟味しているのだ。

そう思うと現金なもので、あれを買おう、これも買い換えよう、と思うようになった。
収入の当てがあれば、やはりモノを買おうと思うのだ。
いくら正規労働者が増えた、大企業の内部留保の額が増え、大企業が増益だと言っても、一般の庶民は収入が増えなければモノは買わない。
イオンも無印も、ニトリIKEAも多くの商品を値下げしたのは、「政府が何を言っても、結局は脱デフレは嘘だと、企業は気がついたんですよ。」と経済評論家の荻原博子の談話がネットに載っていた。

昔OLをしていた頃、同じ会社のOLが体調が悪かったのか、「今日は休みたい」、とおばあちゃんに言うと、「そんなんで休んでどうする。貧乏人は気力だよ。」と言われたそうだ。

昔、みんな貧乏だったので、気力で貧乏を乗り切ることができたかもしれないが、今の貧乏は違う。
今の貧乏というのは、どうも底なし沼に足を突っ込んで、そのまま浮き上がれない気がする。

貧乏は体力、気力を奪う。
貧乏はすごいストレスになる。

都知事の舛添は、月収11万で子供が2人、まだ小さいので、昼食はカップラーメンだとテレビで言っていた。
それを見た都民ファーストの音喜多議員は、「カップ面など贅沢品!」「本当にコストをセーブできるのは米とパスタです。」などとツィートして炎上している。

自炊する時間があれば、コンビニ弁当やファストフードを食べて、余った時間は1時間でも眠りたい、というのが、ギリギリに生活している人の実感である。
少しでも節約したい、と思っても節約する時間も余裕もない。
節約する時間があるのは、余裕のある人達だ。

アベノミクスはやっぱり絵に描いた餅。
大失敗。