非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

正社員。

今の現場の仕事は、流通関係の店舗の清掃である。
流通大手、さらにこの店舗も大型店だ。
警備や保守関係は子会社になり、その子会社の下請けに私が契約している清掃会社が入っている。
そして、この店舗に派遣されて清掃をしているんである。

清掃は、日勤は午前8時から夜10時までで、1日4人が時間を重複しながら勤務する。
夜勤は深夜11時から翌朝8時までで、契約ではたしか8人だと思うが、その8人が全員で清掃を行う。
これが本清掃で、店舗が閉店してから本格的な清掃を行うのである。
だから日勤の清掃は主に店舗内の清掃点検で、開店してから汚れたところを清掃したり、店内のゴミ出しなどが主な仕事である。

日勤と夜勤の責任者はそれぞれ違うが、その責任者は他に幾つかの現場を受け持っているので、常にいろんな現場を回っているので常勤しているわけではない。
受け持ちの現場に問題や事故があった場合、現場に行って対処したり、始末書を書いたりするわけで、さらに清掃会社の本社に行ってさまざまな業務もこなさなければならない。

以前は日勤の責任者が常勤していたが、その人はアルバイトで時給が100円だけ高いだけの女性だった。
この女性の評判が悪く、おばちゃんの多い清掃スタッフの中で一番で若かったが、その年上のスタッフや、特に気に入らない人にはキツイ言い方をしたらしい。
それ以外でも店長や店舗の人たちなど全員から嫌われ、さらに清掃会社の支社長まで嫌ったため、この現場から外されたのである。
しかし、こんなに評判の悪い人でも人手不足なのか、他の現場で働いているらしい。
もっと待遇のいい職場を探しているらしいが、条件を選びすぎているのか、転職できずにいるらしい。

一方、夜勤では契約社員として常駐している50代前後の男の責任者がいた。
その人は刈谷さんといって、いつも外でサボってタバコを吸っていたので、元請けの人たちの間でも問題になっていた。
最初は一人で吸っていたが、そのうちバイトのフランス人のピエールと連れ立ってタバコを吸うようになったらしい。 
ピエールは最初は真面目に働いていたが、刈谷さんの影響で感化されたんだろう。

社員や出入りの業者は、入店する時は裏の通用口から出入りし、必ず警備員室の前を通り、社員はセキュリティカードでチェックするし、業者は必ず会社名、氏名、入店時間などの入店記録を記入することになっている。

警備員室を通ってから、清掃員は地下の清掃控室に入って、タイムカードを押すのである。
刈谷さんは、このタイムカードをわざと押さず、手書きで本社立ち寄りとか、テキトーな理由を記入して早く帰ったり、遅く来たりしていたらしい。

しかし入口の入店記録の時間をみれば、タイムカードの内容や時間と違っていることは一目瞭然である。
その上日常的に仕事を手抜きし、サボってタバコを吸っていたので、結局去年の9月にはそうした証拠をつきつけれられて契約更新できずにクビになってしまった。
たまに控室で刈谷さんと話をすることがあったが、話題が豊富でいろいろなことをよく知っていた。
8時上がりのはずなのに、いつも時間前には着替えてスマホをいじっていた。
ところがクビになることが決まってから、9月前にはほとんど姿を見せなくなった。
日勤の責任者を嫌って、絶対に顔を合わせないように帰っていた、というので、クビが決まってから私とも顔を合わせたくなかったので、時間をずらして帰っていたんだろう。
今思いだすと、刈谷さんは清掃会社の担当営業も馬鹿にしていたし、社会や世の中を舐めている感じがした。
どうも一生懸命働くことがバカバカしい、と思っていたのかもしれない。

刈谷さんが辞めたので、夜勤の常勤の責任者もいなくなった。
そして、ピエールは一人でサボるようになって、結局はクビになった。

ある時、次長が来て、「誰かこの現場の責任者になってくれないか。」とバイトの人たちに聞いたが、だれも返事をしなかったそうだ。
夜勤の女の人が言うには、「当たり前じゃん。責任者になりたくないから、バイトしてるんだし、責任者になっても大してバイト料が変わらないんだよ。」と言っていた。

清掃会社の営業の夜勤の責任者は、後藤課長という40代半ばの男だが、忙しいのかほとんどこの店舗の現場に顔をだすことがない。
バイトの人たちは、日常の業務で細かい問題や連絡事項があるので後藤課長に電話をするが、まったく電話にでないそうだ。
仕方がないので、留守電にメッセージを入れても返事がないので、頼んだことをやってくれない。
こんなふうなので、夜勤の人たちは結局後藤課長は相手にされず、仕方がないので上司の辻次長に電話するようになった。

この後藤課長は私も何回か会ったことがあるが、身長は180センチ近くあり、スポーツをしていたのか、かなりガタイがよく、色黒で顔が角ばっていて、ホームベースのような顔をしている男だ。
本社の他の担当営業に言わせると「後藤さんのあの性格は一生直りませんよ。」と言われていたが、「あの性格」というのはいったいどんな性格なんだろうか。
みんなに聞いて見ると、「メリハリがない。」とか、「流されやすい。」と言われていた。
クビになった刈谷さんは、「後藤課長は仕事の優先順位が付けれらない人」と言っていた。
バイトのみんながいろいろ言われるが、そのうち他の現場で次々と問題が起きるので、他の現場に行っているうちに、頼まれたことが皆中途半端になって結局何もできていない、ということになるらしい。

清掃会社は基本的にはブラック会社だ。
後藤課長は欠員のある現場で作業をしたり、問題のある現場に緊急に呼び出されて対処したり、始末書を書いたり、さらに本社に行って事務処理を行ったりすると深夜になり、そのまま会社で仮眠を取って早朝の現場に行く、ということを日常的に行っている。
入社してから代休は1度も取っておらず、1日平均10時間勤務はザラで、休みも月に数えるぐらいしか取れないようだ。
毎日クタクタになるまで働いて、結局精神的にも肉体的にもボロボロになった。

それでうつになり、気力体力が持たなくなったので、昨年いっぱいで辞めたい、と言っていた。
しかし上司の辻次長が「もう少し頑張ってみないか」と説得されて、残留することになったのだ。
昨年辞める時は、「心を病んでいるので、温泉に行ってしばらく休みたい。」と言っていたのだが。
やはり後藤課長は回りが言うように、優柔不断で流されやすい人なのかもしれない。

しかし、よく考えてみると、後藤課長が仕事ができる、出来ないにかかわらず、自分から仕事を辞めたい、と言うべきではなかったのかもしれないと思う。
後藤課長は、こんな働き方ではとても体が持たないので、負担を軽くするように配慮してくれ、もっと具体的に言えば人を入れてくれ、と会社に申し出るべきなのではなかったか。

人が足りないので、もうちょっと頑張って見ないか、なんて口車に簡単に乗ってしまうのは、後藤課長の性格だからなのか。
残留が決まってから、もうハラをくくったのか、今の現場の夜勤の仕事は全くタッチしなくなったようだ
だから、夜勤の人たちは、実は後藤課長がなぜ首にならず、未だに会社にいるのかが、理解できない、と言っている。。

非正規労働者は時間給なので、仕事にはシビアになり、自分にメリットのないことはしなくなった。
実はこのしわ寄せが正社員に及んでいるんである。
本当は清掃の人員が足りない場合は、その穴埋めは担当営業が行って清掃を行うことになるが、夜勤は常に1〜2人は常に欠員である。
だからこれが元請けにバレると契約違反になるが、夜なのでわからないんだろう。
しかしその分、清掃はかなり雑になっているので、そのうちバレるかクレームになるだろう。

今国会がやっと開会され、働き方改革を行う、と安倍首相は所信声明で言っていたが、「働き方改革」は実は「働かせ方改革」である。
いかに正規労働者を合法的に安い賃金で長時間働かせるか、経団連と知恵を絞って考えたのではないか。

みんな正社員なれば雇用問題は解決される、というのは幻想である。
相変わらず過労死や過労自死が後を絶たない。
正規労働者は今や、正社員の身分のために命を削って働いているように見える。