非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

韓国の非正規労働者 韓国映画「明日へ」

非正規労働者の比率が日本では40%、韓国では45%だという。
NHKの番組で世界の最低賃金が紹介されていたが、日本はこの前18円upして798円。
一方韓国はたしか572円。
アメリカが900円近く、イギリスやフランスなどは1200円前後、だったと思う。
ただし、アメリカは州法によって違う。
ちゃんと見ていなかったので、ちょっと記憶があやふやである。

しかし、ネットで調べるとやはり大体こんな感じだ。
日本の非正規労働者最低賃金は先進国の中で最低で、生活保護よりも低い。
ところが韓国は日本より最低賃金が低いが、物価は日本より高いらしい。
これでは一般庶民の生活はかなり苦しいだろう。

韓国映画「明日へ」という映画は2007年に実際にあったスーパーの非正規労働者の話である。
主人公ソニは、男の子と女の子の二児の母親だ。
夫の職業はよくわからないが、出稼ぎなのか軍隊に入っているのか、遠隔地に仕事に行き、不在がちである。

ソニは、大きなスーパーマーケットのパートをしている。
その職場で5年間ミスなく働き、サービス残業も嫌な顔ひとつしないで働いたので、正社員にすると朝の朝礼で発表される。
ところがそのスーパーが経費削減のため、現在働いているパート全員のクビを切り、派遣社員に切り替えることになった。

それを聞いたパートの主婦たちが全員結束して労働組合をつくり、会社経営者と交渉しようとする。
しかし、経営者側はその交渉の場に現れず、とうとうパートの主婦たちはスーパーに立てこもる。

ここに描かれた内容やエピソードは、日本社会の現状と重なる部分がかなり大きい。

スーパーで働いている主婦たちのほとんどは、生活が楽ではなく、パート代が生活費の一部となっている。
20代だと思われる若い女性は、スーパーで働きながら正社員の仕事を探しているが、50回も採用試験に落ちている。
労働組合の代表に選ばれたジングルマザーは、最初の子供を授かった時、残業を断れず流産する。
そして、その後妊娠したため、会社を解雇されてしまう。
韓国も日本も、労働意欲のある女性に対して、妊娠、出産、そして育児に無理解で残酷な社会である。

ソニの息子が修学旅行の旅費のためにコンビニでバイトをするが、約束のバイト代を払ってもらえない。
ここも日本と同じように、正当なバイト代は払われず、ブラックバイトと言われる不当な扱いをされる社会の構図が描かれている。

また、ソニのクラスメイトで、祖母と二人暮らしで生活保護を受け、放課後はコンビニでバイトする女子学生が出てくる。
同じ学校に通う学生の間にも格差が広がり、豊かな家庭の子供と修学旅行に行けない子供たちがいることが浮き彫りにされる。

その後、会社の都合で解雇予告をされた正社員の男性も加わって運動を続け、スーパーや会社前でビラを配るが、会社側は機動隊を出動させて力づくで排除しようとする。
この映像はどこかで見たと思ったら、辺野古で座り込みをしている人たちを機動隊が力づくで排除しようとする映像と重なる。

非正規労働者の問題や格差、ブラックバイト、出産育児に対するマタハラ、女性差別は日本と同じである。
韓国の問題は日本の問題とこんなにそっくりなのか、と驚いてしまった。

この映画はストの中心人物をのぞいて全員が職場復帰できたそうだが、それで本当にハッピーエンドになったのだろうか。
2014年に公開され、大きな話題になったが、最近韓国では10万人を超す、朴政権退陣を求める大規模なデモが行われた。

経済が停滞し、社会の閉塞感が増し、さらには歴史教科書の国定化がきっかけになり、多くの国民の怒りがデモという形になった。
そして、政府はそのデモに多くの機動隊を投入し、道路に移動用のバスを並べて「壁」をつくり、放水銃で大量の催涙剤をデモ隊に噴射した。
これは報道された内容だが、映画ラストのデモの様子とまったく同じである。
現実の10万人のデモでは、デモ隊がバスをロープで引っ張って移動させたり、車体を破壊し、かなりの大混乱になったようである。
高齢の男性が重体になったとも報じられている。

これが、2015年11月に行われた韓国のデモの様子だが、私は少し前に見た「首相官邸の前で」という映画を思い出していた。
原発のデモも、その後の安保法反対のデモでも、このような混乱は起きなかった。

これは日本人と韓国人の国民性によるものかもしれない。
しかし、少し前の日本でも、過激派と呼ばれる学生のデモでは実際に行われていたのではないか。
時代は変わったのだろうか。
少なくとも今の一般の日本人は、物事を理性的に解決していくことを望んでいる。

この映画を観たのは平日昼間の上映だったからか、ほぼ2割の入りであった。
韓国ではアイドルが初出演ということや非正規労働者の問題は韓国国民にとって身近な問題なので、かなり話題になったようだが、日本ではほとんどマスコミには取り上げられていなかったように思う。

非正規労働の問題、失業の問題は、もはや自己責任という言葉で解決されるような問題ではない。

日本でこれだけ非正規労働者の問題が取り上げられているのだから、こうした映画がもっと紹介されてもいいと思ったのは私だけだろうか。