非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

派遣労働者ばかりの世界に

労働者派遣法改正案は、9日に賛成多数の上可決した。
しかし、施行日を9月1日から30日に変更したため、11日衆院本会議で再び採決し、与党賛成多数の上、可決される見通しとなった。

この労働者派遣法改正案に対しては、次の記事が長いがかなりわかりやすく説明されている。

派遣労働者ばかりの世界に」が現実となり一般企業はもちろん人材派遣ビジネスに大きなメリット生む派遣法改悪|田端博邦東京大学名誉教授
http://editor.fem.jp/blog/?p=681

安倍雇用改革をどうみるか?ーー労働時間の規制緩和と派遣法改悪 田端博邦東京大学名誉教授インタビュー

内容を紹介すると

正規雇用拡大を成長戦略と考えている安倍政権

雇用改革はアベノミクスの第三の矢の成長戦略の一環として提案されている。

成長戦略とは雇用改革で、日本企業の国際競争力を強化することが基本的な目標。
労働者が働きやすくするとか、労働者の生活を良くしようということが目的ではない。

雇用改革の方策として、有期労働と派遣労働の規制緩和を進めること。

正規、非正規の二極分化をさらに広げ、非正規雇用をさらに拡大させる。


直近の統計で、非正規雇用は約2,000万人、全労働人口の約4割。

非正規、正規雇用を問わず、労働コストを削減して、グローバル企業の国際競争力をつけることが目的。

賃上げを利用して政治的基盤強化を狙う安倍政権

 ・賃上げの恩恵を受けるのは一部の大企業の組織労働者だけ。
 ・他方で、非正規労働者の低賃金を維持し、再生産をする政策を進めている。
 ・日本の国民の大部分がサラリーマン世帯なので、これらの人たちの人気取りのための政策なのではないか。
 ・労働組合対策としての賃上げ

安倍政権の成長戦略は、雇用労働者全体の賃金水準を本気で大幅に底上げしようということではないので、この政策は中長期的に成功する可能性は低い。


労働者保護の法制度を解体する安倍雇用改革

 ・この雇用改革は、労働者保護の観点を欠いている。
 ・労働者の雇用や労働条件、生活を保護するための法制度が、解体過程におかれている。
 
この欠陥の性質はネオリベラリズムそのもの。

民主党政権下での労働者保護の規制の強化を緩和し、「取り戻す」のがねらい。


この雇用改革は誰が推進しているのか?

規制緩和を一番望んでいるのは、安倍個人ではなく、経済界である。
主に製造業のグローバル企業を中心とする経済界が安倍雇用改革の真の推進者。


改革プロセスで労働者側を排除し、人材ビジネスが跋扈

労働法制改革プログラムは、官邸主導のもと、3つの審議会によって決定された。
その審議会は、規制改革会議、産業競争力会議経済財政諮問会議の3つ。
この審議会のメンバーは、トップクラスの財界人、政府寄りの有識者、さらに人材ビジネスの代表者が多数入っている。


労働者側抜きの審議会で基本方針が決まる。

労働者側が入っているのは、労働政策審議会だけ。


EUと日本の派遣労働者に対する考え方の違い

EUの派遣と日本の派遣の違い

ヨーロッパ:常用派遣を原則。
       労働者は派遣会社と雇用契約を結ぶので、一般の直接雇用労働者と同じ。

日本:   登録型派遣
       派遣会社に登録し、派遣先が見つかり、派遣先に就労することになっ        て派遣元と期間を定めた雇用契約を結ぶ。


EUでは派遣労働者を雇い入れる場合、3つの入り口規制がある。

1.有期雇用を導入する正当な理由がなければならない。
  産休、怪我などで、一時的に欠員ができる。臨時的に人出が足りない、など。
2.有期雇用の期間上の上限を設ける。
3.更新回数の規制。

3つのいずれかを取ればいいので、義務的ではない。
入り口規制では、期間のルールはまったく出てこない。


ヨーロッパの派遣は、派遣といっても派遣元との雇用関係はテンポラリー(一時的)ではなく、派遣元との雇用関係はしっかりした期間の定めのない契約でなければならない、というのが前提になっている。

日本の派遣労働者は、派遣元でも有期で、派遣先でも有期なので、二重の不安定雇用である。

ヨーロッパの派遣は、テンポラリー(一時的な)事情に対して、テンポラリー(一時的な)な雇用を受け入れる仕組みを作ろうという考え方。


EUの3指令

「均等待遇原則」、「平等原則」の適用

有期労働者が働いている職場で同じ仕事をしているパーマネント(永久の)の労働者の処遇、賃金と同一でなければいけない。

派遣元でも派遣先でも派遣労働者に発言権ある仏


パーマネントな仕事に有期雇用をあてる日本の異常

無限に更新し続ける有期雇用という、雇用の仕方自体が問題。


ヨーロッパの派遣の場合は、

派遣の有期規制は、まず入り口規制で一時的、臨時的な事情がなければダメ。
有期の更新を含む雇用期間の上限が決まっている。
少なくとも2年を超えて更新を続けられることはほとんどない。

日本の場合は、更新回数を制限する規定がないため、5、6年、多い人は10年以上の更新がある。

パーマネント(永久的な)雇用を、企業の雇用政策として、法形式的に有期雇用契約という形で構成し、それを規制してこなかった法体系が問題。
期間の上限1年(現行3年)、しかし更新回数に制限がなかった。

パーマネント(永久的な)な仕事に有期雇用を当ててはならない。

パーマネントな雇用には、パーマネントな雇用をしなければならないのが、ヨーロッパの雇用の考え方。


めざましい人件費削減をもたらす派遣法改悪

現行法: 一般業務について、同じ職場で同じ仕事に就く派遣労働者を導入できるのは原則1年、3年。
      専門業務は制限なし。
今回の法案: 派遣労働者は、派遣先で労働できるのは3年(一般業務、専門業          務を含む)
         派遣を受けいれる企業は、同じ仕事であっても、派遣労働者を替え         ればさらに派遣労働を継続することができる。


これは、受け入れ側の立場から見れば、非常に重要な原則を180度転換させる意味を持つ。

一時的にしか使えなかった派遣労働者を、パーマネント(永久的に)に使える。
結果として、一時金、退職金がいらないので、人件費を圧倒的に削減できる。
雇う側からすると、派遣法改悪法は、「おいしい話」

派遣労働者の安定性は全く改善されない。

企業は、これから正規労働者から派遣労働者に切り替えていこうと考える。


派遣労働者ばかりの世界に」が現実に

そして田端氏は、この派遣法改悪案は、人材ビジネスにとって、多大な利益とビジネスチャンスがあると述べています。

最後に、就業支援としてのトレーニングに、公共的な職業教育、職業訓練の機構をもっと整備すべきだと述べています。

このインタビュー記事の意見、感想については、次回述べたいと思う。