非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

(1) 「派遣労働者ばかりの世界に」 田端博邦東大名誉教授の談話の感想

これは、前回、田端博邦東大名誉教授の談話を読んで、やっと少し今の世の中のことがわかったように感じた。
自分が非正規労働者になるまでは、非正規や派遣労働者や労働問題について考えたこともなかったのだ。

そして、この談話を読んだ感想は、

日本の雇用制度はすでに崩壊している。
と思う。

派遣法改正は、11日、衆院本会議で自民、公明などの賛成多数で、可決された。
一部の派遣労働者の反対が報道されはしたが、多くの人の注目、関心は、安保関連法案である。
しかし、この問題は、一部の派遣労働者の問題ではなく、正規、非正規労働者の区別なく、労働者の規制緩和が進んでいる過程にある問題だ。

安倍総理、というより経団連の経営者、大手人材派遣会社はしてやったり、と思っていることだろう。

自分が非正規労働者になって、この談話を読んでみると、なるほど世の中はここまで進んでいたのか、と愕然とする思いだ。

そして非正規職員になって感じた不快感、違和感、疎外感の正体がこれだったのかと、やっと合点がいったのだった。

非正規労働者として働いたのは、もう2年ぐらい前のことである。

この職場は正規職員のほかに、正規職員と同じ仕事をする准職員がおり、その人たちは1年契約で雇用年数の上限が決められていた。
それが何年だったかは記憶が定かではないが、たしか3年だったか、5年だったと思う。
そして、その他に非正規労働者として短期雇用の(1ヵ月単位)労働者と、1年単位の契約期間を設けた労働者がいた。
この非正規の1年契約の職員は、3年雇用を上限にしていたように記憶している。

気が付いたら世の中は、正規労働者と非正規労働者に労働者は二分されるようになった。
そして、正規労働者以外の契約社員非正規労働者は契約期間を設けて雇用するようになっていた。

それは、民主党政権下で労働者保護の規制を強める雇用政策を行い、有期労働者が同じ職場で5年経過したのち、労働者の申し出により、正規雇用に転換される制度ができたので、雇用主は
有期雇用から正規雇用に転換させないために期間を区切るのである。
雇用主は正規労働者をなるべく雇いたくない。
固定費としての人件費を増やしたくないのである。

だから雇用主は派遣法や労働法の改悪をよくよく注視し、その都度雇用契約の内容を微妙に変更し、雇用契約を年度によって微妙に変えるようになった。
非正規で入った職場でも、入った年度によって微妙に雇用契約が変わっていたと思う。

それまでの私は、あまりにも無知だったから、派遣法や労働法がどのように変わっていったのか、全然興味がなかったし、それは自分には関係ない事、対岸の火事だと思っていた。

この職場では、正規、准正規職員、1年契約の非正規職員、1ヵ月単位の契約の非正規職員が、それぞれの職階によって、色分けされた座席表がよく配られていた。
それが、常に流動的に人が入れ替わったので、しょっちゅう配られていた。

正規職員の仕事と准職員の仕事は基本的に同じで、その他の非正規職員は正規職員の補助的作業や雑用をこなす。
非正規職員は、仕事に関する教育や研修というものが十分になされることはない。
さらに仕事は、色分けされた職階によって分断されているので、情報を共有することもなかった。
今までいろんな職場で働いてきたが、こんなにいろんな職階の人たちが同じフロアで働くことはなかった。
そして、こんなに非効率な働き方はなく、仕事が円滑に進められることがなかったのも、この職場が初めてだった。

今まで正社員で働いていたどの組織よりまとまりがなく、ただ漠然と職場に行って仕事をしている、という感じが強かった。

今まで正規社員で働いていた頃も不満はあった。
しかし、非正規労働者で働いてみて、はじめて自分は正規労働者として守られてきたんだということがよくわかった。
非正規労働者の扱いが、モノ扱いのように感じていた不快感は私だけだったのだろうか。

こういう職場ではとてもやっていけないので、結局1年と少しで辞めてしまった。
嫌だと思う気持ちや不快に思う気持ちは情緒的で甘いのかもしれない。
しかし、その不快感、違和感、疎外感はなんなのかを考えてみると、それは自分自身がモノ扱いにされている、今までの正社員のように身分が安定され、尊重されていないからだと思い当たる。
そして、それは何故なのか、と思ううちに非正規労働者や派遣法や日本の労働問題に行きついたのだった。

この色分けされた座席表をしょっちゅう配られる不快さが気にならない人もいるだろう。

長くいる非正規職員の年配のおばちゃんたちは、
「ここはカースト制ですのよ、おほほほほ…」と言って動ずることはなかった。
しかしその一方では、非正規職員の人たちが、「ここはこういうところだから」と言いながら、その「こういうところ」の言葉に、この職場に対する侮蔑の感情があったように思う。


チリ沖で起きた地震は、津波が20数時間後に北海道に達し、さらにその数時間後に沖縄に達する。

対岸の出来事だと思っていたのに、気が付いたらすでに自分のところにまでその影響がきていたんである。
正規労働者、非正規労働者のいかんにかかわらず、知らないうちに雇用関係や労働環境はどんどん悪くなっている。