非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

外国人労働者

日勤のふぁんさんは、ベトナム人の27歳の女性で、お姉さんが関西の方に住んでいるそうだ。

午前中は日本語学校に通い、午後は某宅配便の配送センターでバイトしている。

そこに某国立大学に留学しているベトナム人がいて、その男子学生の紹介でこのバイト先に来た。

27歳といっても女性、というより女の子、という感じである。
色黒のニキビ顔で化粧けもなく、女の子らしいおしゃれもあまりせず、パンツにカジュアルなシャツを着て、足元はスニーカーだ。

最初、日本に来てまだ1年もたっていないのだろうと思っていた。
それでも日本語は日常会話ぐらいはわかるのかと思っていた。
しかし、それはどうも違う、ということが最近わかってきた。
初めは、なにか説明すると、笑顔で「ハイ、ハイ」といい返事が返ってくるので、意味が理解できているのかと思っていた。
ところが、彼女たちの「ハイ」は「わかりました」の「ハイ」ではなくて、相槌の「ハイ」なので、本当に言っていることがわかっているわけではないらしい。

つい最近までその笑顔と「ハイ」に騙されていた。
ところが、ある時具合が悪そうなので、「切りのいいところで帰ってください。でも、帰る時は必ず誰かに言ってから帰ってね。」と言ったことがあった。
しばらくして、彼女の姿が見えなかったので、一体どうしたのかと皆が心配した。
結局彼女はまだ帰っていなかったが、自分が帰る時に断ってから帰る、ということが、どうも理解していなかったらしい、ということがわかった。
何回も何回も念を押して言い、笑顔で「ハイ、ハイ」と言ったあの返事はなんだったのか。

また、ある時ホワイトボードに張られていたメモを読んでもらうと、ひらがなは読めても、漢字が読めなかった。
「No.4の鍵が見当たりません。」と書かれたそのメモは、鍵と見当たりの漢字の部分が読めない。
これでは何が書いてあるのかわからない。

私達が説明したことが実は全然理解できていなかった、と気がついたのは、つい最近のことである。

清掃の仕事は、先に仕事の手順をやって見せるので、そのやり方を見れば、だいたい仕事の内容は理解できる。
まだ若いので、直ぐに仕事の手順はすぐに覚えることができたのだ。

しかし、それは表面的なことで、結局のところ、言われたことしかできないし、仕事の内容を本当に理解できているわけではない。

考えてみると、彼女は私たちに積極的に話しかけてくることはあまりなかった。
性格はとてもシャイで、同年代の日本人の女性と比べても、とてもシャイだが、これは国民性なのか、彼女の個性なのかわからない。
何か話しかけてくれば、片言でニコニコして話すことはあったが、それは考えてみれば、本当に初歩的な会話に過ぎなかった。
だから、ちょっと込み入った話をしても、わかっていなくてもニコニコ笑いながら「ハイ、ハイ」と言う。
少し複雑な話をしようとしても、しどろもどろになって、ほとんど説明できない。

あまりにも日本語ができず、どうも意思の疎通ができないので、ある時パートの女の人が
「日本に来てどれくらいになるの?」
と聞いてみると、なんと日本に来て、もう1年と半年になるという。
日本に1年以上いるのに、ほとんど日本語がわからないことに、私たちは衝撃をうけたのだった。
毎日日本語学校に通い、さらに試験前になると、土日のバイトを休ませてくれ、と言ってくるが、これでは意味がない。

さらに彼女は、
日本語学校に行くのもいいけど、私たちとおしゃべりすれば、日本語の勉強になるんじゃないかしら。」
と言ったそうだが、相変わらずニコニコしているだけだったという。

冬の寒い頃に来たから、もうこのバイトに来て半年はたった。
最初は真面目にやっていると思っていたが、彼女の性格や勤務態度を見ていると、何となくちょっと困った子だな、と思うようになった。

それは、まず挨拶ができない。
事務所に戻ってきても無言で、出かけるときも無言である。
いくらなんでも、事務所に戻ってきて、誰かいれば、お疲れ様、ぐらいは言ってね、と最初は言ったこともあった。
「あいさつ、大事。」というとニコニコして「ハイ、ハイ」と言う。
大型店舗なので、店舗の社員も大勢いるし、清掃の親会社の人もいるし、その他にも裏方の警備などのスタッフもいる。
最初はわからなくても、だんだん慣れてくれば、顔も覚えるはずで、親しくなくても「お疲れ様です。」ぐらいの挨拶はしてほしい。
中には清掃員の挨拶など、人によっては無視されたり、まるで誰もいないかのような態度をされることもあるが、それは末端労働者なので仕方ない。
その上、親会社のセンター長が、「お疲れさま」と言って、思いっきり無視されたと言っていた。
挨拶されてもされなくても、こちらからは挨拶する、これが日本の常識である。

そういう挨拶が、もう半年になるのに、まるでできていないのはいかがなものか。
注意してから、控室を出ていくときに、たまに何か言うことが2、3回あったが、その言葉が意味不明だった。

この職場は、清掃の人間が4人時間をずらして働いているが、それぞれシフトによって基本的な作業内容が決まる。
その上、店舗は広く、さらに4人のうち2台、スマホガラケーをそれぞれ持っている。
それではオペレーションが悪いと、清掃会社もさすがにおもったのか、最近ガラケーがもう一台増えたが。
電話には警備の人や店舗の人などから、店内でガラス瓶が割れたり、水漏れ、嘔吐、トイレの汚れ、つまり、店舗内の汚れなどがあると、連絡が入り、清掃に行かなくてはならない。
トイレなどの巡回をしているときに連絡が入ると、作業を中止して行かなければならないので厄介である。

この緊急呼び出しの内容はいろいろだが、お酒売り場ではしょっちゅうワインや日本酒などの瓶割れがあり、さらに通路に延々と排泄物が垂れ流してあり、その道筋をたどると、男子トイレのトイレの個室に行き当たり、そのトイレの便器も汚れていたりする。
一時は男子トイレのオムツ入れに、大人のおむつが5,6個毎日のように捨ててあり、それを処理するのが大変だった。
さらに、夏や冬などは子供の嘔吐が多い。
嘔吐物の処理はビニール手袋、マスクをし、さらに嘔吐物を糠やトイレットペーパーを丸めたものなどでまとめ、それを新聞紙にくるみ、消毒液をかけて、二重にしたビニール袋に入れて、さらにその中を消毒液をかける。
ビニール袋の中に紙エプロンや手袋、マスクを入れて、厳重に口を縛る。
そして嘔吐した周辺のものはすべて消毒液で消毒し、その上で水拭きをし、乾いた雑巾で拭き取り、きれいにする。

こう書いてみるとかなりの作業量のように思うだろうが、もう慣れてしまったので、大したことはない。
しかし、それでも手間はかかり、やはり数十分はかかる。
緊急呼び出しが来たときに、まず確認するのは場所で、何階の何売り場、とか、何番レジ前とか、あるいはどのあたりの通路であるとか、女子トイレか男子トイレか、その場所がどのような状況なのかの確認である。

こうしたことは、わからないなら何度も確認できるが、日本語が全くおぼつかないふぁんさんにはとても電話は渡せない、としてずっと渡さずにいたら、結局半年たってもなにも変わらない状態になっていた。

他の人が緊急連絡で忙しく働いていても、彼女は我関せずで、マイペースで働いている。
回りの状況から臨機応変に対応する、ということはできない。
最初に入った時に教えてもらったこと以外はやらないし、やろうとしない。
皆がそれぞれの現場で忙しく働いている時に事務所に入っていくと、彼女がのんびりと椅子に腰かけて、スマホyoutubeを見ていたりする。
自分の決められた仕事さえしていればいいと思っているのだろう。

その上、当日になってからのドタキャンが2度あった。
1回目はお姉さんが東京に来ている、と責任者に電話があり、その後どうしたいのかしどろもどろだったので、話を整理しながら聞くと、どうも当日はバイトを休みたい、ということだったらしい。

2度めは、同じ清掃員の人の携帯に意味不明のショートメールが来たらしい。
日本語になっていないので、何を言いたいのかわからない。
そういうショートメールを数人に送ったらしい。
最後にやっと責任者にメールを出して、意味不明のメールをやり取りしているうちに、どうも今日は休みたい、ということがわかったらしかった。
その時はすでに彼女のシフト時間が過ぎていたので、仕方なく責任者が現場に向かう頃にはお昼すぎになって、その日の仕事が遅くなってしまった。
彼女のメールには「学校の先生は学校が大事、と言っています。」と書かれてあったという。
学校の先生は、バイトは休んでもいいが、学校は休まず行きなさい、と言いたかったのではないか、と言っていたが、だから何?と思わずにはいられない。

最初の「お姉さんが東京に来るので休みたい」という言い訳は、東南アジアのアルバイト学生が休む時によく言う言い訳なんだそうだ。
2度目の休みの時は、意味不明のショートメールが送られてきたが、休みたいなら電話で休みたい、と言えばいいように思うが、やはり休みたい、と当日言うのは気が引けたのだろう。
それもなんで休みたかったのか、意味不明だが、結局のところ、毎日学校と午後のバイトが月曜から金曜まであって、その後土日は午前11時から午後8時まで丸々一日働きづめで、1週間休みがないのだ。
さらに日本のこの猛暑に疲れもたまっていたのだろう。
それは考えてみれば仕方のないことで、普通の日本人だってこの暑さには大分まいってはいるのだ。
しかし、それでも他のアルバイトの人は、ドタキャンしたりはしない。
それは、ギリギリのシフトを組んでやっているのがわかっているので、休めば他の人の迷惑になるのがわかっているからだ。
休む時は事前に早めに言わないと、人の手配がつかない。

結局のところ、わからなくてもわかったふりをしてニコニコしてやり過ごしてしまったので、1年を過ぎても日本語が全然上達していない。
最初は熱心に仕事をしていても、慣れてくると見えないところでは手を抜いたり、嘘を言って休んだりするようになったので、案外ずるいんじゃないかと思われるようになった。

こうして見ると、最初からもっと厳しくいろんなことを教え込んだり、注意すればよかったのか、とも思う。

非正規の現場でももっと厳しいところだと大変だろうが、本当にマニュアルどおりのことしかさせないところでは、もう日本人とか外国人とか、関係ないのかもしれない。
それはそれでなんだかなぁ、と思う。
なかなか決まらなかった土日のシフトに外国人でもやっとシフトが埋まったので、責任者は最初は少しぐらいは多目に見て、あまり厳しいことは言わないで、長い目で見ていこうと思っていたらしいが、ドタキャンが続いたり、仕事ぶりがだんだんわかってきたら、このままでは困る、とは思っているらしい。
しかし、現実問題として、人が足りない限り、結局こういう子でも使わない訳にはいかない。

夜勤のベトナム人の女の子が二人いたが、この2人もふぁんさんと同じ人の紹介で入った。
しかし、やはり二人いると、おしゃべりやサボりが多くなり、仕事も手を抜くようになり、さらにドタキャンでよく休むようになった。
この二人は、午前中は学校に行き、その後は配送センターでバイトをし、さらに夜勤でこの現場で働いていたそうだ。
他の夜勤の人に言わせると、「いったいいつ、お風呂に入るのよ」ということらしかったが、それでは体も持たないだろう。
新しく日本人が決まったので、この二人はクビにしたが、結局あとに来た日本人は体がきついと言い、もう一人はこの仕事はやりたくない、と思ったので辞めていったのだ。
こういう汚くて疲れる仕事は、結局日本人はやりたがらないので、外国人か高齢者が低賃金でやるようになる。
だから時給が上がらないと、ネットか本で読んだことがある。

ふぁんさんは別に犯罪に走るとか、何かひどいことをするわけではない。
しかし、置かれた環境の中で、何となくこ狡く立ち回るようになったり、あまりきれいとは言えない事務所の奥の着替えの場所で平気で寝たりするので、人によっては「やっぱりお国柄なのかしらね、あんな汚いところでよく寝られるわね。」と言われたりする。
お国柄、というのはやはり見下した言い方だと思うし、自分達だって寝てはいないが、あんな汚いところで着替えているではないか、と私は内心では思っている。

今の大型店舗でも人手不足なので、人を募集しているが、外国人の場合、募集案件には「日本語が堪能なこと」と書かれている。
たぶん、身元などもしっかり調べられるのでないか。
たしかに中国人や外国人と思われる人たちも働いているが、日本語は堪能で、挨拶もしっかりしているし、頭もいい人たちだ。
中国人の女の人は、たぶん配偶者が日本人で、日本で生活している人たちだと思われる。

やはり同じ職場で働く場合、言葉の壁は大きく、言葉がある程度通じれば、仕事もうまく回るんだろうか。

少し前の新聞記事では、ベトナムから介護職員として1万人の労働者を受け入れるそうである。
ふぁんさんのような人が1万人来るんだな、と思ったら、介護の現場は収集がつかなくなるだろう。

やれやれである。