非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

2020年になくなる会社

結局、今の現場は6月末でなくなることになった。

先週の水曜日だったかに営業の田中さんがきて、元請けが切られたので、その下請けの私たち清掃会社も契約終了ということになった。

最初、契約終了は8月末まで、というと、
秋本さんが感情的になって、
「それじゃあ、7月8日で辞めます。」
と急に言いだした。
「定期がちょうど7月8日までになっているので。」
と言いながら定期券まで取り出してみせたのだった。
秋本さんのその様子にちょっと驚いた。
田中さんも驚いていたようだが、何か気に入らないことや、自分の考えと違うことがあると、態度が急変して動揺する人なのかもしれない。
いつも口をへの字にして、言葉数が少なく、なにを考えているのかよくわからない。
なにか手伝ったりしても、通りいっぺんに「ありがとうございます。」と言うが、それがそっけなく、通り一遍の言い方で、愛想が悪い。
最初は驚いたが、結局こういう人なんだと思うようになった。

ところが秋本さんが7月8日まで、と言ったので、この現場は末締めなので、それで結局6月末になった。

もう一つのテナントビルの清掃のバイトは、30代半ばの男性とアラフィフの女性が辞めることになった。
男性はもう一つの現場の仕事を頑張りたい、と言い、女性は他のバイトの兼ね合いで、と言っていたが、実のところ時給のいいところに決めた、ということだ。
アベノミクスいざなぎ景気を越えた、とか言われているが、私のような非正規労働者は全く実感がない。

それでも人手不足なので、時給はじわじわと上がっている。
辞めた人たちの時給は1000円だったが、1200円の現場に移ったのだ。
今は、ひとつの現場にいるより、少しでも時給のいい方に人がどんどん流れる。
これは、非正規労働者が使い捨てにされているので、仕方のないことだ。

秋本さんと話をしていたら、前の現場を何故辞めたのか、という話になった。
秋本さんは大きなターミナル駅にある、とても有名な商業施設の清掃の仕事をしていた。
その施設には清掃会社が何社も入っていたのだ。
彼女が契約している清掃会社はあまり大きくはなかったが、そこで長く働いていたのは昇給があって、さらにボーナスと退職金が出るからだ、と言っていた。
ところがその商業施設が出入りの業者をまとめたいので、清掃会社も1本化して、大手清掃会社が受け持つことになった。
彼女はその大手の会社に契約し直せばその現場を続けて働くことも出来たが、辞めたのだった。
それは、いままでの昇給やボーナス、退職金制度がなくなったからだった。

待遇というのは高いところに合わせるのではなく、低いところに合わせられるらしかった。
大手の清掃会社は、こういった清掃員は代替可能な消耗品としか思っていないのだろう。
だから、非正規労働者の清掃員はどんどん待遇のいいところに移ってしまう。
考えてみれば、会社勤めをしていた頃は、たしかに定年退職後の契約社員やパートの主婦の人がいた。
そういう人たちは、ずっと長く働いていたので、正社員と同じ待遇ではなくても、ボーナスの時は金一封ぐらいは出ていたような気がする。
こうした人達は長く働いていたので、人間関係もできていたし、仕事の習熟度もそれなりにあったので、仕事や労働環境は安定していた。
それが、正規労働者も非正規労働者人もどんどん変わるので、職場環境はその場その場のやっつけ仕事のようになっている。

テナントビルの清掃は、アルバイトが2人辞めるし、今いるアルバイトの人も何人かはいい加減な仕事をする。
しょっちゅう遅刻をしてきたり、当日になって急に休んだりする。
正社員で入ってきても、3日たったら来なくなった人もいた。
だからそういう人たちに、責任者の矢代さんや本社の人間が振り回される。
しかし、今は人手不足なので、いい加減なアルバイトでもクビにはできないのである。

アルバイトが2人辞めて、1人は何とか補充できたが、男の方は募集を出して2週間になるが、応募が全くない。
仕方がないので、矢代さんや正社員で何とか埋め合わせをする。
こういうことが続いたら、矢代さんも考える、と言っている。

矢代さんは
「大体この会社もいつまで持つかわからないし。」などと
口を滑らせて言っていた。

矢代さんの言っていることは、最初なんのことかわからなかった。

しかし、なるほど、そういうことなのかと、私はちょっと内心合点がいった。
たぶん、経営者や上司が
「この会社は経営が苦しい。」
とか
「赤字会社だ。」
と日々言っているのだろう。

小さい会社で、会社の経営者が経営が苦しい、ということで社員にガマンを強いるのはよくある話だ。

だから、事務の女性が辞めたり、男性の正社員が辞めても補充せず、残った営業部員がその埋め合わせをしてさらにブラック化しても誰もなに言えないんだろう。

宅配便大手のヤマト運輸は、未払い残業代を支払い、さらに社員を増員して配送料を値上げする。
さらに、配送の時間帯も変更するが、これは会社が大きいからできることだ。

今日本には大小たくさんの運送会社があるが、今後、こうした宅配業者は整理統廃合されるだろう。
資金力ががあって、設備や労務環境がきちんと整えられるところしか生き残れない。
大手何社かに絞られ、その傘下に下請けが入るようになるか、下請けに入れない小さい会社は廃業するしかないだろう。

清掃会社も多分そうで、2020年のオリンピックまでは特需が続くが、その後は不況になって、生き残れる会社は限られる。
安い時給でやっつけ仕事をさせている今の清掃会社は、今でさえ経営が苦しいようなので、生き残るのはむずかしいのではないか、とふと思った。

矢代さんに、転職するなら今のうちですね、と言おうかと思ったが、余計なお世話なので、口をつぐんだのだった。