非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

人手不足のその後

このテナントビルは、最初から契約内容がコロコロ変わるので、人がどんどん辞めていく。
今、月曜から金曜まで一緒に仕事をしている秋本さんは、本社の経理部長の紹介で入った人だ。
作業は、私ともう1人の2人体制なのである。

ところがここにきて、1階が6月いっぱいで出ていくことになり、今まで月水金と週3回の掃除機掛けと雑巾がけが週1日になった。
秋本さんの作業時間が週に2時間短縮されることになると、担当営業の田中さんがそう秋本さんに告げると、
週に2時間時間が減ると、月に1万円収入が減るので、それなら辞めさせてほしい、と言ったらしい。
すると、他の現場を紹介するので、続けて欲しいと言われたのだ。

その現場がこの現場の近くのビジネスホテルだった。

しかし、秋本さんはビジネスホテルの仕事は断るつもりだった。
彼女が言うには、ビジネスホテルは仕事がキツく、腰を傷める。
さらに、1時間か1時間半の作業時間だと思っていたのに、ビジネスホテルでは、最低3時間は働いてほしいと言われたのだ。

それで、彼女はこの仕事を紹介してもらった本社の経理部長に連絡をすると、
その部長の話では、
そのビジネスホテルは日本人は皆辞めてしまうので、外国人労働者が多く、仕事の環境があまりよくない。
さらに、シフトは基本は9時から3時までなので、遅く行って早く帰るのは回りの人からよく思われないのではないか。
この仕事はできれば辞めた方がよく、そのかわり、時給1100円のところを1200円にするように交渉しよう、
と言われたそうだ。

彼女は時給が1200円になるなら、労働時間が減っても大体同じ収入になるので、しばらく働こうかと思っていた。

しかし、秋本さんがビジネスホテルの仕事は辞退しようと思っていることが、担当営業の田中さんには伝わっていなかった。
だから、本社の代務員と呼ばれる塩田さんが、ビジネスホテルを案内するためにわざわざやってきた。
断ろうと思っていた秋本さんと、初日から仕事を1時までさせようと思っていた塩田さんの思惑が違ったのだ。
秋本さんにしてみれば、現場を見学して面接をするはずだったのに、現場では初日から午後1時まで働いてもらおうとあてにしていたのだ。
朝、塩田さんと話をして、秋本さんはそれがわかったので、内心面白くなかったことは想像に難くない。

だから、塩田さんがビジネスホテルの話をしても、秋本さんがあまりにやる気のない返事をしたらしい。
それで、塩田さんが怒って、結局秋本さんは行かずじまいになってしまった。

結局、本当は予定があったのに、仕方なく塩田さんがジネスホテルに行って、秋本さんの代わりに仕事をしたのだ。
秋本さんが先に帰った後、塩田さんは何も言わず、憮然とした顔をして、不機嫌そうだった。
翌日秋本さんに聞くと、秋本さんは塩田さんにはなにも言わなかったそうだ。
これを聞いて、私は秋本さんの常識のなさに驚いてしまった。
断るにしても、わざわざきてもらった塩田さんに何も言わないのは、失礼な話ではないか。
本当は他にも仕事があったのに、わざわざきたのである。

その数日後、営業の田中さんが来ると、とりあえずは
「すいませんでした。」
と謝っていたらしい。

田中さんは他に仕事を紹介するから、と言っていたそうだ。
私は、結局会社は時給1200円は払いたくないんだろうと、見当をつけた。

この現場は下請けなので、利益率があまりよくない。
会社としての利益を引いて逆算すると、アルバイトの清掃員の時給はなるべく低く抑えたい、というのが本音だろう。

そして、その後営業の田中さんが新しいスケジュール表を持ってきた。
私は月曜から金曜までの作業時間は変わらないが、秋本さんのスケジュール表をみると、秋本さんの作業時間は週2時間半減っていた。

私は秋本さんの作業時間が2時間半減っていることに気がついていたが、興味がなかったので、秋本さんにはなにも言わなかった。

それがやっと、今週の月曜日秋本さんが気がついた。
「最初、2時間減る、と言っていたのに、スケジュール表をみたら、2時間半減らされていたのよ。」と不満げに言った。

そうか。
営業の田中さんは確信犯なんだな、と思った。
前の清掃の女の人も、募集の内容と実際の労働時間が違っていた。
募集は月曜から金曜まで、3時間半、となっていたのに、実際は3時間半の日が3日、2時間の日が1日、2時間半の日が1日だった。
彼女はそれを不満に思っていて、裏では
「よっぽど募集の内容が違うじゃないですか、と言ってやろうかと思ったのよ。」
と言っていたが、春には予定があったので、何も言わないので辞めたのだった。

こういう清掃のような末端労働者は、労働時間や時給などにはシビアである。
今は求人難なので、中途半端な求人内容だと、人が来ない。
だから、田中さんは嘘の求人募集を出したのだ。

これは小さい嘘だろうか。
この清掃会社は、こういう嘘を会社ぐるみで、組織的にしているんだろうか。
それとも、そういう嘘をつくのは、担当営業の田中さんだけなんだろうか。
募集はハローワークだったので、もし募集内容に虚偽があり、それを通告すると、その会社はもう募集を出すことはできない、と辞めていった女の人は言っていた。

前のスポーツジムの清掃のバイトをしていた時も、一緒に働いていた男の人は、よく小さい嘘をついていた。
それも、絶対それ、違うだろー、嘘だろーとわかる嘘を平然とついていた。
「ここ、掃除した?」
とか
「あれ、片付けてくれた?」
と聞いて、
「はい、やりました。」
と言ってもやってないことが多かった。
最初は、
「あれ、やってないよ。」と言っていたが、
何回かすると、この人はこうやっていつも小さい嘘をつく人なんだな、と思うようになった
私はジムの清掃会社の社長があまりにも人間的に嫌だったのもあって辞めてしまったが、こういう人と一緒に仕事をしたくないのも辞めた理由のひとつだった。

日本人は正直で勤勉な国民だと言われていたが、実はもうそれは昔のことである。
2007年に発覚した一連の食品偽装問題は、廃棄食品の転売であったり、食品製造現場でずさんな管理をしたり、メニューの表示が違ったり、賞味期限の改ざんがあったりした。
さらに建築物の耐震偽造問題やオリンピックのエンブレムの盗用疑惑、STAP細胞のデータ改ざん、全ろう作曲家にゴーストライターがいたことが発覚したなど、真偽はよくわからないが、枚挙にいとまがない。
モラルの低下はここまできているんである。

日本人は、いつから平気で嘘をつく国民になったのだろう。

あるはずだった文書を破棄した、と言ったり、確認したがわからない、と言ったり、あることをない、と言ったり、黒を白と平気で言う人達。
そういう人たちが日本を代表する人だったり、社会の中枢にいて日本を動かしているのだから、そういう嘘つき社会になっても仕方がないということなのか。