非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

ネグレスト

杉山春氏の「ルポ 虐待」がとても印象に残っていたので、その前作の「ネグレスト」を読み始めたが、どうにも感情移入できない。

この「ネグレスト」は、若い20代の夫婦が育児放棄をして、子供を死亡した事件をルポルタージュしたノンフィクションである。

最初を読んだだけで、どうにも読み進めるのが困難である。

杉山春氏が、「子育てはつらく、苦しいものである。」と書いているのは、1児の母親である著者の実感だろう。

スポーツジムの掃除のバイトをしていた時、社長の元カノの同僚の娘が短期間バイトに来ていた。

その彼女は、21歳で広田さん(仮名)と呼ばれていた。
広田さんは、21歳のシングルマザーである。
社長の元カノは、月曜から金曜は製造業の生産ラインで正社員の仕事をしていた。
広田さんの母親と彼女が同僚だったのだ。

私は実際に彼女とシフトがダブルことがなかったが、ある時、乳液とクレンジングを間違って補充してしまい、大騒ぎになった。

とにかく、仕事が雑だったのを覚えている。
前の日に彼女がシフトに入ると、バックヤードの備品などの棚がいつもめちゃくちゃになっていた。

結局、いろいろ問題もあったらしいが、仕事をバックレて何回か来なかったので、社長がクビにしたのである。

広田さんのお母さんは再婚で、広田さんを育てていた時はシングルマザーだった。
社長の元カノの話では、とにかく仕事が好きな人ではあったらしいが、育児はほとんど放任だったらしい。
それでよく生きていられたが、母親はずっとフルタイムで働いていたので、経済的に困窮したことはなかったらしい。
しかし、ほとんど母親らしいことは何もしなかった。
母親が再婚したのは小学校高学年の時である。
そしてその頃からよくウソをついたり、家出を繰り返すようになったらしい。
中学生になると、家出はほぼ日常的で、学校もほとんど行かなかったらしいが、母親が何とか高校には入学させたらしい。

高校は義務教育ではなく、ほとんど登校しなくなったので、本当は退学になるところだが、親心で休学にしてもらったらしい。
そして、家にも寄り付かなくなっていた。
広田さんの母親は再婚して、その再婚相手の子供を出産した。
広田さんにしてみれば、再婚した相手や新しい子供のいる家に、居場所がなかったのだ。
ずっと音信不通だったが、ある時乳飲み子を連れて、実家に帰ってきたという。
母親も義父も驚いたが、産んでしまったものは仕方ない。
娘と子供を実家で育てることになった。
相手の父親は、やはり同い年ぐらいだったが、社会性に乏しく、さらに経済力もなかったので、結婚はできなかった。
広田さんの義父は建設会社の現場監督をしている。
広田さんの子供の父親はその現場で働いている青年で、朝の挨拶でもみんなの前でまともに挨拶できないような青年だった。

実家に帰ってきた広田さんは、休学している学校を続ける気はなく、さりとて母親の自覚はない。

経済的なこともあるので、広田さんの母親が社長の元カノに相談して、スポーツジムのバイトをするように頼んだのだ。

バイトをして、小金が入るようになったので、広田さんはまた夜遊びをするようになった。

勝手に家族割りで携帯を買ったり、クレジットカードを作ったりしたらしい。

そして、バイトもバックレるようになった。

社長の元カノの話では、そんな広田さんと広田さんの両親とで話し合いをしたことがあったらしいが、とにかく話をしていてもめちゃくちゃだったらしい。

義父の話では、広田さんのことを
「私はもう、この子のことはあきらめています。
とにかく小学生のころからずっとウソしか言ったことがありません。」
と言ったとか。

さらに本当の母親は、広田さんに対しては、広田さんが何か言うと、感情的になって一方的にあれこれ頭ごなしに怒り、決して広田さんの話を聞こうとはしないそうだ。

小さいときは母親は仕事に夢中で、ろくに食事は作らず、コンビニの弁当や買ってきた惣菜ですまし、さらに義父も実母も人の話は聞かず、いつも頭ごなしに怒られていた。
さらに再婚して新しく子供ができるとその子供に夢中になって自分は相手にされない。
だから家出を繰り返す。
これでまともに子供が育つとも思われない。

しかし、その子供がまた子供を産んだのである。
広田さんの母親は、それでも早すぎる孫を結構かわいがってはいるそうだ。
広田さんは、自分が赤ちゃんを連れて帰れば、自分の居場所ができる、と考えていたようだ。

バイトを辞めたので、その後の消息はよく分からないが、子供を放置してまた外に遊び歩いているんだろうか。

最後に社長が言った言葉が忘れられない。
「死ぬな、あの子供は。」

家族とか家庭という箱がどうも壊れている、ということなのか。
こういう子供が、今は多い。