非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

生活保護という罠

日本はかつて一億総中流、世界でも稀な平等な社会であるとかつて言われていたが、今や日本も格差社会となり、ある人たちにとっては無数の差別を受けているような気がする。
無数の差別、と言ってしまうのは神経質すぎるだろうか。
「出会い系のシングルマザーたち」朝日新聞社鈴木大介氏の本を読んだ。
離婚をしてシングルマザーになった母親たちが、生活のために出会い系サイトに登録し、売春をする母親たちの姿を追っているドキュメントである。
著者は売春をする母親たちが「だって、寂しかったから」という言葉に大いに困惑し、彼女たちの置かれた立場に驚く。
彼女たちの共通点は、「職がなく、頼るべき血縁がなく、精神を病んでいる。しかし、生活保護は決して受けず、子どもを手放そうとしない」事だと言う。
著者は出会い系シングルマザーの中に「隠れ破綻者」が数多くいることを指摘している。
多数のカードローンを限度額まで使っている多重債務者が、パートと愛人契約でなんとか生活をやり繰りしていたりする。
ここに出てくるシングルマザーたちは、出会い系で売春をしていても、決して生活保護を受けようとしない。
それは、生活保護を受けることによって、子どもたちが学校で差別され、イジメにあうことを母親たちが恐れているからである。
他人との小さな差異をみつけて差別し、イジメるのが残念なことに日本人の特徴である。
この本で紹介されている、社会事務所で生活保護の申請や、市役所管轄である「児童扶養手当」を申請する手続きや、民生委員のやり取りを見ていると、ほとんどがイジメとしか思えない。
相手のプライドをずたずたに傷つけて、申請をさせまいとしているのだろうか。
公務員でさえ一般市民のプライバシーを守れないのに、公務員でもない民間人の民生委員が一般市民のプライバシーを守れるだろうかとも書いている。
だから、多くのシングルマザーたちは生活保護の申請に二の足を踏むと言う。
さらに、NPO法人まざぁーず・ふぉーらむ赤石氏の話では、「母子家庭の手当の削減、あるいは福祉を切りたいときの前には、(厚生労働省主導の)不正受給キャンペーンをしてくるのが経験としてわかってきた」という。
だから「生活保護児童扶養手当に対する差別、生活保護を受けたらすごいスティグマ(差別の刻印)があって、自分たちはすごい劣等な人として扱われちゃうんだよと言うような意識が、(母子家庭に対する福祉予算を減らしたい)厚生労働省と共犯関係になっている」という。
最近では売れっ子のお笑い芸人の母親やその親族たちが生活保護を受けている、ということで大きなバッシングを受けていた。
漠然とした言い方になってしまうが、一般の日本人の中には生活保護というのは抜きがたい差別意識があるというのは残念ながら本当のことである。
そう、「だから政府は、生活保護スティグマ意識を本気で払拭したがらない」んである。
離婚して風俗嬢になり、自分は毎日恋人と遊び歩き、虐待とネグレストを繰り返し、子どもを殺してしまった母親もいる。
しかしこの本のように、出会い系で売春をし、精神を病み、子どもの前で手首を切っても子どもだけは手放したくないと言う母親もいるのだ。
このどちらもが日本が抱えている現実だが、この母親たちを責めることができるだろうか。
母親の問題で見えなくなっているが、本当の問題は、こうしたシングルマザーたちに育てられている子どもたちの未来や人権が踏みにじられていることで、日本の社会はすでに「アウト」だろうと私は思う。