非正規労働者めぐろくみこのブログ

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自分の居場所を探して

「しがらみ」を科学する: 高校生からの社会心理学入門 (ちくまプリマー新書)
「しがらみ」を科学する ちくまプリマー新書 山岸俊男
今の世の中、学校もダメ、教師もダメ、親もダメ、社会もダメ、政治もダメ。
それでも引きこもらず、世捨て人にもならず、生きていかなくちゃならない。
若い人たちは、地雷の上を、見えない有刺鉄線の中を生きているようだ。
連想ゲームではないが、「世間」「空気」「しがらみ」「KY」ときて、「イジメ」「シカト」「集団リンチ」「自殺」と続く。
怖いよね、こんな世の中。
副題は「高校生からの社会心理学入門」となっている。
著者は社会心理学者である。
この本は、「社会に出るのがなんとなく不安だ」と思っている高校生、大学生に向けて書かれている。
山崎俊男氏によると、「社会」は「しがらみの集まり」であるという。
ではその「しがらみ」をどのように対処すればいいのか、社会心理学の視点から考えてみよう、ということである。
そのためには、世の中の出来事に全体を通して見る、社会の問題すべてを「心」の問題で説明する「心でっかち」で考えないようにしようと説く。
さらにイジメの問題では、ある一定以上の人間が「やめろよ」と言うことによって阻止することはできるし、一方見て見ぬ人が一定以上集まればイジメを止めることはできない。
これを著者は「いじめの螺旋」と呼んでいる。
お互いがお互いの空気を読みあうお友達社会だから、うまくいっているときは仲がよいが、なにか1つトラブルやミスがあると、ものすごい勢いでバッシングされるのはよくある話で。
時には、その人の人間性や品性、品格、人格まで全否定されてしまう。
これは日本の社会の特徴なんだろうか。
日本には「世間」があって、「社会」はないという。
「社会」とは契約や法律に基づいて作られ、「社会」を作ることにより、個人の自由を確保されるが、日本のように「世間」しかない社会では、その社会に適応できない人たちは引きこもるしかなくなってしまう。
しかし、最後に著者は、まわりの人の空気を読むのが苦手でも、「理論を使って」『社会をちゃんと理論的に理解して、そこで働いている原理を使って「社会」で自分がどうしたらいいのかを考えていけばいい』と説く。
本当は生きにくいとみんなが考えている社会を「法律や契約といったかたちに置き換えた社会に変えていく必要がある」という。
ものすごく意訳すれば、自分の居場所を探しなさい、と言っているように思うのだが、もし自分の居場所が見つからないなら、自分で自分の居場所を作って行かなければいけない世の中になったのかもしれない。
人をモノのように扱い、使い捨てにされる世の中で、自分の居場所を見つけることは難しく、さらに自分の居場所を作ることはさらに困難だろう。
この本は高校生、大学生を対象に書かれているが、具体的にどんな高校生や大学生をイメージしているのか、ごく普通のクラブ活動や勉強を頑張っている人たちなのか、もう今の状態が辛くてたまらないとか、なんとなく今の状態に満足していないとか、どんな状況で、どうしたいのか、そういう人達にこの本はたどりつくことができるのか、ということが一点。
それから、この内容を高校生は理解できるだろうか、というのが一点。
さらに、この本を読んでその先どうしたらいいのか、ということが述べられていない。
ただし、この本を読んだ後に「安心社会から信頼社会へ」と言う本を読んで下さいと書かれている。
本当はこの著者の本では、『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』(集英社インターナショナル)を読むとよくわかるが、この本は高校生にはむずかしいだろう。
著者は高校生向けに書かれたこの本をかなり苦労して書いたのではないか。
高校生相手に政治の話を書いてもいかがなものか、とも思うし、今の若い人たちがもう少し世の中の出来事や政治に関心を持って、もっと風通しのいい「社会」に変えていくようになるといいと思うのだが。