非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

(一)ユニクロ帝国の光と影

ユニクロはこの本に対し、文春側を名誉棄損で訴え、「2億2000万の損害賠償、取り消し広告の掲載、本の回収」を要求した。

ユニクロ 国内編
営業時間は朝10時から夜8、9時に閉店。元店長によると、1日の労働時間は15時間か16時間となり、月300時間以上の労働時間となるが、管理職のため、残業代はつかない。
一般の店長で年収は600万〜700万、10名前後いるスーパースター店長で1000万以上、さらにその中で優秀な人が独立してフランチャイズ店のオーナーとなって3000万という。
3年間で5割前後の離職率、5年で8割、休職者の42%が鬱病だという。
標準店で40人の従業員に対し、正社員は店長と(店長)代行の二人のみで、後は非正規社員となる。
それぞれの役職により、店長マニュアル、(店長)代行マニュアル、アルバイトの作業マニュアルと細かく仕事の内容が分けられ、その通りにやることを義務付けられている。
アルバイトには笑顔からお辞儀の仕方、頭髪、姿勢、服装、挨拶、爪までの注意事項があり、休憩室の入り方、挨拶の言葉まで大声で言うように指導されている。
辞めて行った元社員はまるで軍隊のようだったと言う。
裁判の争点としては、六点あり、国内の記述箇所が三点、中国の記述箇所が三点である。
1.店長の月300時間を超す労働時間。
2.ユニクロ本社では月240時間を超す残業は許されないことから、タイムカードを押してから就労を続けるサービス残業があること。
3.サービス残業をうすうす知りながら、本社が黙認していたこと。

1年と数カ月で辞めたユニクロで働いていたと思われる人の話を読んだことがある。
店長となってから数カ月後には出社拒否症になり、やがて辞めたが、辞めて1年後ぐらいまでは鬱病となり、働けなかったという。
その若者は仕事を辞めざるを得なかったのは、自分に能力がなかったからだと、ずっと自分を責めているような口調なのが印象に残っている。
しかし、著者は現職の店長、および辞めた店長からの取材から上記の内容はほぼ事実であり、数々の内部資料を提供されている。
こうした社員はどういう気持ちでこのような証言や資料を提示したのだろうか。

ユニクロ 中国編
著者は柳井氏にインタビューをした際に、中国取材の依頼をしているが、断られている。
そこで、2010年に広東省浙江省に独自に取材した。
85%が中国の70工場で作られているという。
上海と深圳に生産管理事務所を置き、約170人のユニクロの社員が働いている。
生産管理とは別に“匠チーム”と呼ぶベテラン技術指導員を工場に送り込み技術の向上に努めている。
ユニクロのポロシャツは日本では1990円だが、原価は350円前後だと言う。
著者は実際にユニクロの工場で働いている20代の女性にインタビューしている。
ユニクロのラインで働く彼女たちの定時は朝8時から5時までだが、定時で終わることはなく、残業が夜9時、10時を超えるのはざらで、作業が終わらない場合は日が変わっても働き続けると言う。
日が変わっても朝は8時から仕事が始まる。
それでも彼女たちの月収は残業代込で月1500元、日本円で約2万、日本と中国の物価はおよそ5倍だとして、日本円で約10万、年収は約120万である。
一方柳井氏の年収は、役員報酬が3億、ユニクロの株の配当金で65億、総額で68億となる。
次に出稼ぎに来ていた夫婦を取材した。
奥さんの月給は約2000元で、夫は製品の検品作業をしていると言う。8歳になる娘の学費のため、夫婦は体が続く限り働き、娘にはちゃんとした教育を受けて、事務所で働く人になってほしい、と言うのが夫婦の夢である。
出稼ぎ労働者は多いが定着率は低く、工場では工員募集の大看板が立っている。
著者はユニクロの委託工場で働く労働者を取材するにつれ、その生活の貧しさに驚く。
日本では96%の人がユニクロの商品を買ったことがある、と答えているが、ユニクロの工場で働く労働者にはユニクロの商品は高すぎて買うことができないと答えている。
ユニクロの商品は、中国では中流以上の人でないと買えない商品である。

中国で劣悪な労働条件のもとでつくられている商品を、日本人のほとんどの人が買っている、という事実に背中がうっすらと寒くなる思いがする。

さらに、国外の記述の争点は次の3点である。
1.中国の工場の営業マンの証言で、ナイキやアディダスと比べてユニクロは条件が厳しいと述べているが、その人物は当時中国国内担当者だったから、比較ができる立場にない、としている。
2.女性工員のうちの二人を名簿で確認できない。
3.「アイロンがけ」の工員は「検品担当」だったとして、国外での記述内容は誤りである。

しかし、いずれも裁判ではそれらが「真実」であるか「真実相当性」があると判断され、10月18日原告側の請求をすべて退け、文春側の圧勝となった。