非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

(二)ユニクロ帝国の光と影

ユニクロ vs  ZARA
SPAとは「GAPが80年代後半に自社の新しいビジネス・モデルを表わすのに使った造語」である。
それは「原料調達から製造機能、小売機能まで一貫して一社で行うことにより、余計なコストを削減した新しいビジネス・モデル」のことだ。
『日本のアパレル業界では「製造小売り」と意訳』され、日本で最初に本格的なSPAとなったのはユニクロである。
主なSPAとしてはGAP、スペインのZARAスウェーデンのH&Mがあげられる。
ZARAはGAPを抜き、売上では世界一位になった。
その売上は、10年1月期にZARAインディテックス)1兆3,037億円で、ユニクロファーストリテイリング)は8,148億円の売上で、売上はユニクロの1.5倍である。
柳井氏はそのZARAユニクロのライバルとして挙げており、著者はスペインのZARA
へ取材に飛んだ。
ユニクロZARAの違いはどこにあるのだろうか。

インディテックスは、ZARAを中心に8つのブランドがあり、73ヵ国に2,707店、スペイン国内で1,900店あり、全部で4,607店舗である。
一方、ユニクロは海外7ヵ国に136店舗、国内で808店、合計で944店舗となる。
売上比率は、インディテックスは全売上の68%が国外であり、ユニクロは全売上の10.7%が国外である。

� 固定費の違い
ZARAは生産を中心とした機能を本社に集中し、工場や物流センターを自分たちの資産として持っているのに対し、ユニクロは賃金の安い海外の工場に生産を発注し、
経営の主要部分を外注化し、固定資産を持たない“持たざる経営”と呼ばれている。
これは正社員比率にも表れ、インディテックスは9万2,000人の従業員のうち、80%は正社員であり、ユニクロは3万人の従業員のうち、正社員比率は10%で、3千人である。

� 商品の違い
ユニクロZARAの違いをキーワードで表してみると、
ZARAは「希少性」「トレンド」「ファッション性」「高価格」「高品質」
ユニクロは、「大量生産」「ベーシック」「スポーツカジュアル」「低価格」「高機能」
というところであろうか。
ZARAが最も大切にしているのは「ファッション性」と「スピード」であるという。
本社にはデザイナーとして、デザイン学校を卒業した20代の若者が300人いて、彼らはファッション雑誌、映画、コンサートからデザインのヒントを得る。
そして、その中から試作品を作り、商品化するが、デザイン起こしから出荷まで14日間である。
一方ユニクロは発注から出荷まで1年かかる。
商品数はZARAが年間1万点以上、一方ユニクロは1,000品番である。
ZARAは最初に少生産し、その後売上状況を見て追加生産をするが、1点の商品数は少なくおさえ、“売り切れご免”とし、月に2回新商品を納品し、1ヵ月後には店頭の全商品が変わる。商品の回転率を上げ、不良在庫を極力なくす。
一方ユニクロは、かつてのフリース・ブームのように、売りたい時に品物がなく、納品した時は時期が遅く、売るタイミングを逃し、大量の在庫を抱えた。
そのため、在庫を値引きして売ったことにより、利益率を大きく下げた。
価格は、ZARAジーンズは5,000から8,000円、オーバーコート、トレンチコートが1万から4万、Tシャツは2,000 から3,000円で、ユニクロの約2倍である。
定価販売をするZARAと、在庫を消化するために値引き販売をするユニクロでは、広告宣伝費にも対照的に表れる。
ユニクロは、週末ごとの折り込みチラシ、その他の広告費で、年間4,000億になり、売上に対し、4.6%になるが、ZARAの広告費は売上に対して0.3%である。
そのため、「ユニクロにはディスカウンターとしての側面がいまだに色濃く残って」いる。

この違いは、同じSPA企業でありながら、商品コンセプトの違いであり、創業者の経営に対する考え方の違いだろうか。
柳井氏は小売出身の創業者であり、ZARAの創業者アマンシオ・オルテガ氏はSPAとしては唯一の製造業出身の創業者であるそうだ。

ZARAの従業員たちがどのような労働条件で働いているのかわからないが、柳井氏のドライな経営に対し、正社員率80%というZARAは、ユニクロとは正反対の企業である、という印象を受ける。

この本を、単に今まで明らかにされなかったユニクロ創業者の柳井氏の出自、履歴、ユニクロの国内、国外の労働環境、取引条件などを取材できたからではなく、新しいビジネス・モデルSPA企業ユニクロとして、世界の中でどう位置づけられるかを、競合企業ZARAを取材し、比較することにより、視点が大きく広がったところを評価したいと思う。