非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

お金だけのためには働けなかった

会社勤めというのは、働いていた時ではなく、辞めた時にどんなふうに人から見られていたのか、あるいはそこがどんな職場だったのかがわかるような気がする。
辞める時に意外な人から意外なことを言われたり、「あれ、この人はこんな人だったのかな」と思うこともある。

私は先週末で非正規労働者だった職場を辞めた。
組織が大きかったので、すべての社員を知っているわけではなかったが、それでも辞める、と言ってから、いろんな人から声をかけられた。

非正規社員で働く前、11年間、私は正社員で働いていた。
辞める時、その会社では、次の人の引き継ぎも兼ねて歓送迎会を会社で開いてくれた。
辞める前に、社長がお昼をごちそうしてくれた。
社長が創業者で、ワンマンな小さい会社だった。
私はあまり有能な社員ではなかった。
その上、社長に盾突くようなことを言ったり、反抗的な態度や物言いをすることもあり、社長から見ても私は気に入っている社員ではなかっただろう。
社長はそれでも小さいながらも会社を経営するぐらいの器はあったが、その下にいる営業部長が俗物な男で、大嫌いだった。
本当はもっとその会社のために役にたつようなこともできたが、最後はもうやる気がなかったので、決まったこと以外は何もしなくなっていた。
社長は最後なのだから食事ぐらいごちそうしなければ、と思ったのだろう。
しかし、私一人で食事に誘うのは気まずかったのか、若い男子社員も同席させていた。
特別あたりさわりのない会話で、通りいっぺんな話しかしなかったが、これが社長の好意なのだろうと思った。

ところが1年5ヵ月非正規社員として働いた職場では、いろんな人からの好意を受け取った。
一昨日は事務所の女の人二人が夜、食事に誘ってくれた。
今日はまた違う女の人がジンギスカン料理を食べに行こうと誘ってくれた。
それ以外にも簡単なお餞別の品物をもらったり、昼食に誘ってくれた人もいる。

最後の日は同じ課の人たちがデジカメで撮った写真とコメントが書かれた色紙をプレゼントしてくれた。
こんなことは前の職場ではなかった。
形だけの歓送迎会と社長から招待された昼食だけ。
そういえば歓送迎会の時に立派な花束をもらったっけ。
私は11年も働いていたあの会社が嫌いだった。
11年も働いたのに、あの同じ職場の人たちが好きではなかった。
結局あの職場に合わなかったので、辞めたのだ。
もう年だから、この年で職を失えば正社員にはなれないとわかっていたのに、どうしてもあの職場で働き続きたいとは思えなかった。
人はお金のために働いているわけではない。
しかし、お金のためだけに我慢して働き続けている人もいるだろう。
どこまで我慢できるかはその人次第だ。
非正規社員として働いた職場は、皆いい人たちだったのに、それでも私はあの職場が嫌だった。
これ以上働きたくないと思った。
それは、非正規労働者という立場がいかに危うく、そして差別され、人を物のように扱われるか、ということがよくわかったからだ。
結局私はお金のためだけには働けなかったのだ。