非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

貧困という病

起業しても全然儲からないので、相変わらず土日のジムの清掃の仕事は続けている。
平日はフルタイムで働き、日曜だけバイトに来ていた40代半ばの男の人は、6月に辞めていった。
本人は6月いっぱいと言っていたが、6月の中旬で辞めていった。
5月から第一、第三土曜と第二第四日曜出勤だとか、ややこしいことを言うようになった。
毎週日曜、とシフトが組まれていればいいが、この週は土曜、来週は日曜とか、しかしたまに休みが入ったりして、その男の人がいつ出で、いつが休みかがはっきりしないので、その男の人の次の引き継ぎの人が何時に行けばいいのかがわかりにくい。
そのため他の人からも不評だった。
ジムの清掃は、たとえば3時に終われば引継ぎで3時に次の人がシフトに入る、という訳ではない。
大体30分ずらして、3時上がりなら次のシフトの人は3時半にして、その30分を清掃会社のもうけにするようだった。
本当に細かいというかせこい話で、私が3時に上がれば女の人は3時半にシフトに出てくる。
男と女の人が常時、清掃するのが基本のはずだ。
しかし、清掃会社は私と一緒に働いている男の人も3時で上がっても3時には人はこない。
私が3時で上がれば、次の引き継ぎの女の人が3時半に来る。
男の人も3時で上がっても、次の引き継ぎの男の人は4時に来るようにシフトを組むのである。
30分ずつ時間をずらしながら、その分人件費を浮かせるんである。
ジムの清掃のバイトは全員バイトなので、何かあっても責任は取れない。
しかし、こんなふうに30分でも空白の時間ができて、事故になったらどうするのだろうと思う。
幸運なことに事故はまだ起きてないが。
辞めた男の人は辞める時、なんだかうれしそうに「本業が忙しくなっちゃって」と言っていた。
フルタイムで働いているのに、バイトもしなくちゃならないなんて、というと、他の人は「契約社員じゃないの」と言っていた。
アベノミクス効果で、景気が上向いているんだろうか。
契約社員でも景気が上向き、待遇が改善され、給与があがったのだろうか。
それとも契約から限定型社員になって、やはり待遇が改善され、給与その他がよくなったのか。
結局その男の人の仕事は、今まで9時で上がりになっていた棟梁に引き継がれたので、特別どうということはなくなった。
その代り、早番の6時のシフトの人が新しい女の人になった。
化粧をしない素顔は、シミはともかく深いしわが顔に刻まれ、長い髪を後ろに一つにまとめている。
長い髪は地肌から20㎝まで自毛の黒い毛になり、その下はきれいな茶色にカラーリングされていた。
特別服装などにもかまわないのか、その女の人は地味で老けて見え、さらに近くで話をすると、老人特有の口臭が強く臭った。
年齢は多分50を過ぎているだろう。
週4日、朝6時から9時まで働くというその女の人は、聞けば平日はフルタイムで働いているという。
仕事はなんですか?と聞くと、
「ええ、製図関係なんです。」
「じゃあ、CADとか使う建築関係?」
「いいえ、CADもたまに使うんですけど、専門職なんです。」
と少しプライドがあるのか、エラソーに言う。
聞けばアパレル関係のパタンナーをしているそうである。
アパレル関係をしている人なら、もう少し服装とか感じが違うのではないかと思うのは、私の思い込みだろうか。
朝9時まで清掃のバイトをして、その後会社に出勤するのは驚きである。
「疲れない?」と聞くと
「体力には自信があるから」と言う。
彼女のアパレル関係の会社は、ほとんど残業がない、というより、会社が残業代を払えないので、時間が来たらさっさと帰ってくださいと言われるそうだ。
20代前後の女性を対象にした彼女の会社のブランドは、デザインやパターンは日本でおこし、製造はタイやベトナムでやるそうである。
今の若い女性は、ユニクロしまむらなど、ファストファッションがたくさんあるので、20代前後をターゲットにしたアパレルは厳しいと言う。
「とても恥ずかしくて言えるようなブランドじゃないんですよ」と言いながら、
若い人に人気のあるテナントビルにショップが入っている。

バブルがはじけた後、多くのブランドが無くなった。
その頃ショップの店長や販売をしていた人達もずいぶん首を切られたはずである。
私の知っている店長クラスの人達も、かなりいなくなったのである。
その販売員の人たちが、販売は仕事ができなくても若くてきれいな子を売り場におくので、年を取った販売員は仕事がないとこぼしていた。
ところが、「今は販売員の若い子が集まらなくて困っている」そうである。

昔、販売員はハウスマヌカンと言って、毎日ほか弁を食べても憧れのショップで働けると思い、自社のブランドの服を何割引きかで自腹で買っていた。
しかし、今の若い子は販売や洋服に特別の思い入れがないので、安い時給で、さらに自社ブランドの服まで買わされるのだから、割が合わないと思うのか、同じ仕事ならコンビニでバイトしたほうがいいと思って、人が集まらないそうである。
有効求人倍率が上がり、求人が増えたと言って喜んでいるかもしれないが、募集を出しても人が集まらなかったりする。
景気がよくなっても人手不足だというのは、それは、その仕事に魅力がなかったり、賃金が安すぎるからである。

彼女がフルタイムで働いていても、早朝ジムの仕事をするのはやはりお金のためだろう。
それは今の生活が少しでも楽になるようになのか、老後の蓄えを少しでも貯めたいと思っているのか。
どちらにしても、やはり生活の不安が大きいと思う。

今野晴貴氏は「ブラック企業」のサブタイトルに「日本を食いつぶす妖怪」と書いている。
それならば、格差社会の今の日本は「貧困という名の病が日本を食いつぶす」と私は言いたい。