非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

チャラい男 その後

結局、チャラい男、吉田君は気が付いたら辞めていた。

12月のシフト表には吉田君の名前はなかった。
吉田君が自分から辞めたのか、社長が辞めさせたのか。

新しく来た支配人は細かい人で、吉田君の仕事ぶりが運の悪いことにチェックされてしまったのだ。

社長は朝の朝礼の時に今度の支配人にはくれぐれも気を付けるように、と言っていた。
うちに落ち度があったら、「わかりました。じゃあ、クビにしますから」と言って、相手にプレッシャーを与えるからと。

吉田君はその言葉を聞きながら、嫌な顔をしていたのを覚えている。

さらに、この仕事は普段は社長がいないので、仕事はあんまりチェックされないが、ポイントポイントはチェックされてるから、気を付けるように、と私も言ったはずだ。

吉田君は最初に言われたことを何にも聞いていなかったのか。

支配人のチェックの後の翌週か翌々週か、今度は女性用と男性用の洗顔料が全部入れ替わっていた。
男女の洗顔料はボトルが同じだが、後ろにマジックで印がついているのが男性用だ。
遅番が、洗顔料を取り換えることになっている。

だから、朝来て洗顔料やボディシャンプーなどが違っていたら、それは遅番が間違えたことになるのである。

前の日の遅番の女性は、新藤さんといって、20才のシングルマザーである。

社長によると、

「あいつ、どうしようもない」らしい。

小学校の頃から嘘ばかりつき、中学校になると家出を繰り返し、、高校もぎりぎりか卒業できなかった。

高校を卒業すると、家に帰ってこなくなって、気が付いたら子供を連れて実家に帰ってきたそうだ。

社長の話を聞くと、新藤さんはたぶん発達障害なのではないかと思う。
こういう子どもは案外多く、最近問題になっているのだ。

新藤さんの親と社長の愛人が知り合いだったので、バイトを頼まれたのだ。

社長の愛人といっても、相手の女性もシングルマザーなので、不倫、という訳ではないんだけど。

とにかく朝来てみると、早番の男の人が
「男と女の洗顔料が全部違っていたよ」
と言われた。

私は土日しかシフトに入っていない。
たしか先々週の土曜日、出勤してみると、しばらく休んでいたはずの吉田君がシフトに入っていた。
しかし、相変わらず段ボールは捨てておらず、さらに補充もできていなかった。

私が社長にメールで、
「男性と女性用の洗顔が全部違っていました。
補充が十分できていないので、気を付けてあげてください。」
とメールをしてしまった。

それが引き金だったのだろうか。
新藤さんも吉田君もとうとう正式にクビになったらしかった。

私がなんか告げ口をしたようで、嫌な感じがした。
もうこれからは社長には余計なことを言うのはやめようと思った。

本人が嫌気をさして辞めたのなら仕方がないが、もしクビになったしたら、ずいぶん簡単な話だと思う。
当人たちもこのバイトは良く思っていなかったらしいから、どのみち辞めることになったのだろうか。

考えてみると、学生時代や20代の頃、よくアルバイトをしたが、こんなに簡単にクビになることはなかった。

私自身もずいぶんいい加減な働き方をしていた。
そして、少しぐらいミスをしても、自分もまわりもなんとなくそれが許されるような雰囲気だった。

それは自分自身が甘かったが、世の中もまだそんなに厳しくなかった。

それが今は違う。

アルバイトだから、ではどうもすまなくなっている。

非正規労働者でも仕事の要求するレベルがだんだん上がってきている。

正規労働者は簡単に辞めさせることができない。
雇用主はずるいので、非正規労働者であっても仕事のできる非正規労働者を選ぶ。
時に、正規労働者より非正規労働者の方が仕事ができたりするんである。

だから、正規労働者から非正規労働者に「自分より仕事をしないでくれ」と言われることもあるらしい。
特にお役所のような仕事では、人にもよるが、非正規労働者の方が民間で仕事をしていたので、仕事はよくできる。
区役所や税務署、職業安定所、さらに公立の図書館、年金事務所など、国や地方自治体の窓口での事務手続きの煩雑さ、サービスのなさ、もっと言えば思いやりの欠如を時に感じることがあっても、利用せざるを得ないので、一般の庶民はこれらの機関をガマンして利用しているのだ。
そして、それらの賃金や諸経費は私たちの税金から賄われている。

社会全体はなんだかタガが外れたような、ゆるい感じがする。
しかし、世間の目は厳しくなっている、と感じるのは私だけだろうか。

政治家に対しても、芸能人に対しても、さらに個人個人に対しても厳しくチェックされているような。
社会全体が相互監視されているような、なんだか息がつまるような世の中になったと思うのは私だけだろうか。
たかがアルバイトなのに、なんて今は言っていられなくなった。
怖い世の中だ。