非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

映画 凶悪

怖い映画を見てしまった。
ある死刑囚から編集者に託された手紙によって、今まで闇に葬られていた3件の殺人事件が明らかになる。
これらの事件を編集者が丹念に取材し、現実に起こった殺人事件の全容は「新潮45」で掲載された。
多くのマスコミの注目することにより、警察が動き、事件が解明され、死刑囚のいう共犯の先生の存在が明らかになり、逮捕につながった。
掲載された記事はその後出版されてベストセラーになり、文庫本にもなっている。
映画は編集者に山田孝之、死刑囚にピエール瀧、そして先生にリリーフランキーが演じている。
3件の事件とは、先生と老人の金銭トラブルのためにネクタイで絞殺し、焼却してしまう殺人事件、さらに身よりのない老齢な資産家の男を殺害し、金を奪い、所有していた土地も自分のものにしてしまう。
そして最後の事件は、借金のために首が回らなくなった店の店主を親族と借金の貸し手の社長の依頼により、死刑囚と先生が自宅に呼んで急性アルコール中毒によって殺してしまう事件。
この老人の殺人の描写が恐ろしく、糖尿を患った男に酒を強要し、どこまでも飲ませ、さらにはスタンガンで男を撃ち、アルコール度数98度の酒1本を強引に飲ませる。
リリーフランキーが狂ったように男にスタンガンを撃ち続けるところは、普段は冷静沈着を装っているだけに、おぞましい狂気と、パンフレットに書かれたように、ぬえのような恐ろしさを感じる。
殺人の筋書きは先生が書き、実行は死刑囚と手下の仕事である。
ラジオでこの作者が語っていたように、これらの事件は到底一人では成し得ず、先生と死刑囚の両輪の輪があってはじめて成就できた殺人事件である。
映画は原作と違い、原作では描かれない編集者の私生活を描き、対立をはっきりさせ、編集者が事件の真実を追い詰める姿を、無駄なく息つく暇もなく描かれる。
貧困は、犯罪を生む土壌を作り出す。
そして、人々の心が荒廃し、街がスラム化していく。
日本では死体が上がってもよほどの犯罪性が感じられないと、死体解剖はされず、自殺となって処理される。
それはアメリカと比べ、圧倒的に解剖医が足りないからだという。
私たちの知らないところでこうした犯罪は増え続けているのかもしれない。
まるで、深くて暗い闇がひたひたと広がっていくようだ。