非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

日本の労働者は奴隷なのか。

私が派遣されている清掃会社は大手ではなく、実績がないので直接契約の現場が少なく、清掃業界特有の下請け、孫請けなどの現場の方が多い。
こういう清掃の現場は直接請けた会社がだいぶ金額を抜くので、下請け、孫請けが会社の利益分を引くと、結局私のような末端労働者に回ってくる賃金は当然低くなるのである。

新しい物件の清掃の担当営業は、田中さんといって、40代の男性の営業部員だ。

田中さんは新しい現場の仕事内容や段取りなどの説明のため、初日から1週間ぐらいまでは研修と称して、ずっと付き添って仕事を教えてもらった。
清掃は朝6時半から10時までで、3時間半の労働だが、自宅近くになったといっても、朝は4時起きで、仕事が終わるとゼンマイが切れた人形のようになんだかぐったりとしてしまう。
早朝の清掃の仕事を終わってから、お昼にまたほかの現場に行く人が多いが、とてもそんなに仕事はできない。

田中さんは私の現場の仕事が終わると、トラブっている現場に行ったり、引き合いのある新しい現場に行ったりし、その後会社に帰って社内で残務整理や打ち合わせなどを行う。
やはり1日軽く10時間から12時間ぐらいは働いているようだ。
本人も「ブラックもブラック」と平気で言うが、内心ではどう思っているのだろう。
不満がないわけではないだろう。

週末になると疲れきった顔になり、さらに課長職で役職になっているので、残業代はつかないという。
残業代はつかないが、役職手当がつき、さらにボーナスはその分上乗せされてはいるだろう。
こういう下請けの清掃会社の正社員の賃金はどれぐらいなんだろう。

いつも作業服を着て、薄っぺらいペラペラのカバンに、ヘラヘラの靴を履いている。
長時間労働、長時間拘束で働いているが、それに見合うような報酬をもらっているようには見えない。
妻子がいて、自宅から会社まで1時間とか2時間近くかかるようなところに戸建てを買い、何十年のローンを組んでいるのだろうか。
正社員の人たちは、終身雇用と引き換えに、その席にしがみつき、ブラックであろうがそこで仕事をするしかない。
そして、ほとんどの社員は皆そうしたブラックな働き方をして、そこでそこそこみんな仲良く仕事をしているのだ。
電通の過労死自殺が話題になったが、月に残業100時間は別にそんなに珍しいことではないと思う。
特に中小企業はほとんどそうで、さらには残業代すら払わない会社、ボーナスも払わない会社、さらには社会保険にも加入していない会社、そういう中小企業はたくさんある。
私が働いていた中小企業のほとんどの会社は、残業代が出なかった。
特に最後に働いた小さいインテリア会社は、繁忙期は残業時間が軽く100時間は超えていただろうが、経営的に残業代を出せる余裕はなかった。

電通の企業風土は特殊だが、ほとんどの企業の社員は、正社員という身分を担保にして、会社に身を捧げ、ブラックであっても実は喜々として仕事をしているように思われる。
その企業風土に合わない人は結局辞めていったり、あるいはイジメの標的になった人は心身を壊していく。

日本の労働者は、奴隷のようだ。
奴隷のように身も心も会社に捧げないと、正社員の椅子から転げ落ちてしまうので、みんなその椅子にしがみつく。
政府が働き方改革をと言っているが、実は多くの社員は奴隷のように働かないと生活出来ないのがよくわかっている。
みんな表面的には不平不満を言わずに働いている。
だからブラック企業はなくならない。
それに大部分の人たちは過労死するわけではない。
政府の強制力によって残業や労働時間は改善されるだろうか。
内心では不満に思いながら、声を上げない妻子を養っている男の労働者が多いので、世の中は良くならないんだと私は思っている。

労働時間を単純に短くするなら、最初は人を増やすしかないと思う。
今まで2人でやっていた仕事を3人でこなせば、その分労働時間は短くなる。
しかしその分人件費は増えるだろう。
だから今まで働いていた人たちの賃金は下がるかもしれない。
今でさえ、労働に対して、あるいは子供の教育費、住宅ローン、老後の蓄え、親の介護の費用、月々の生活費を考えると、決して十分な給与とはいえないかもしれない。
自分の時間を削り、歯を食いしばっても今の収入は確保したいと考えているサラリーマンは多いだろう。
だから、給与が下がることに納得するとも思えない。
ましてや非正規労働者の時給を上げるために、自分の給与が下がることに納得できるだろうか。
こういうところで、労働者は経営者に付け込まれているんである。

そして、その次にやることは、労使やその職場の人達が話し合って、業務の見直しをして、仕事の効率化を図ることである。
これは、最後の会社でも何度も話題に上がったが、実現できなかった。
それを拒むのは、今まで仕事のやり方に固執し、新しい仕事のやり方を拒絶する男性社員が多かったからだ。

日本の労働者は労働時間が長い、と言われるが、そのわりには生産性が低い。
この国の労働者は自らすすんでラットレースをしている。
それが国力を衰退させている原因だということに、多くの労働者たちは気がついていない。