非正規労働者めぐろくみこのブログ

非正規労働者が日々感じていることを書いたログです。

悪口

スポーツジムの掃除のバイトを7月末で辞めたが、そのバイト先の鹿内さんから電話があった。
鹿内さんは、65歳で定年退職をして、清掃のバイトをしている。

鹿内さんは、ずっと野球をしていたので、その年代には珍しく、背が高くて痩せてはいるが、がっしりした体型をしていた。
体力もあり、週6日はシフトに入っている。
深夜作業の翌日に早朝6時のシフトに入ったり、通常のジムの清掃以外に月一度の定期清掃や、他の現場のハウスクリーニングやいろいろな現場の清掃もこなしていた。

もう辞めてしまった大工の元棟梁が、
「あの人はお金が欲しいから、あんなに働いているんだよ。
気が張っているから体を壊さないんだ。
なんでお金が欲しいのかわからないけど。」
と言っていた。

しかし、鹿内さんがバイト料の大半は、フィリッピンパブに使っていることを私は知っている。

突然携帯に電話がかかってきたので、ちょっとびっくりした。
「最近、シフトに入っていないからどうしたのかと思ってさ。」
「私、7月末で辞めたんですよ。」

「そうなんだ。」
その言葉にびっくりした感じはない。
たぶん辞めた、とは聞いているが、社長がどうせまた戻ってくるよ、とか言っているのかもしれない。

話を始めると、やはりバイトの人の噂話や社長の悪口になってしまう。

悪口は、バイト仲間のMさんとW君と社長である。

Mさんは今年5月に新しいジムのオープンに求人で入ってきた、41歳の独身の男の人だった。
身長180センチの巨体で、年齢相応に腹が出てきたどこにでもいるようなオヤジである。
Mさんは仕事ができなかった。
入って3ヵ月以上たっても、何度も同じことを聞く。
人に指図されないと何もできない。
やることなすこと、なんだかピントがずれていた。
一見真面目そうだが、実は見えないところでは手を抜いたり、小さく嘘をついたりした。

Mさんの仕事ぶりから見ると、どうも職を転々としてきて、どこも長続きしなかったらしい。

もう一人のW君は、司法試験の勉強をしていたが、断念して就職活動をしたが、結局どこにも就職できなかった。
仕方ないのでコンビニでバイトをしていたが、そのコンビニも潰れてしまったという。

30代半ばのW君は、質問をしても返事が返ってくるのに時間がかかる。
頭は悪くないのかもしれないが、人とコミュニケーションがとれない。
w君は顔だちは悪くない。
背も高く、田舎の優等生みたいだ。
何でこんな子に育ったのか、謎である。

この二人がジムの定期清掃に入ると最悪である。

定期清掃は月に一度、ジムの休館日に通常掃除できないところを大体5、6人で手分けをして一日がかりで掃除する。
高窓のガラス拭きや通路や廊下などのワックス掛けなどを行う。
とにかくジムは広く、朝9時ごろから夕方の7時ぐらいまでびっちり掃除をする。

この二人には、一から十まで指示しないと何もしない。
作業が終わっても、、
「終わりました」でもない。

鹿内さんの言い分は
「あいつらがいると、仕事が全然捗らない。」
とさんざん愚痴っていた。

この二人ともシフトに入っていたことがあるので、鹿内さんの言うことはよくわかる。
特にMさんとは4時間シフトがダブる時があったが、仕事はそれぞれの分担があったが、とにかく一緒に仕事をすると疲れる。

私と鹿内さんは二人の悪口をとめどなく話していた。

さらに、それから社長の悪口が続く。

Mさんは社長には絶対服従で、他の人の前と態度が全然違う。
社長はお山の大将なので、何か意見したりする人が嫌いである。
こういうところは仕事はできないが、案外ずるがしこい。
さらに、愛人と別れたばかりなので、寂しくて仕方ない。
だから、時間があいた時に連れまわして、ごちそうしたりしていた。

鹿内さんの話はさらに続く。

「とにかく機嫌が悪くなると、怒鳴るんだよ。
Mを怒鳴るんだけど、たまにこっちも怒鳴られたりするしさ。
あれは、他の人にも聞かせるために怒鳴っているんだよ。
まったくあれにはたまったもんじゃないよ。」

そうか。
鹿内さんが電話をかけてきたのは、社長に怒鳴られたのを愚痴るためだったのか。

たしかにどの組織でも怒鳴られ役、というのがいるのだ。

鹿内さんは、今度は社長の悪口を言い始めた。
私のやめた理由の一番は、社長が原因である。
ほとんどのバイトの人の辞めた理由も社長だった。
とにかく口が軽く、バイトの人の噂話や悪口を他のバイト仲間に言う。
それが回り回って、本人の耳に入って、怒って辞めてしまった人もいた。
とにかく社長の俗物さ加減に皆うんざりして辞めてしまう。

最初はいい気になって、人のうわさ話や悪口を言っていた。
人の悪口は楽しい。
どんな組織にもみんなから嫌われたり、悪口を言われやすい人がいる。
一番言われやすいのは、協調性がなくて、仕事ができない人だ。
だから、悪口を言われる人にはそれなりの理由がある。


サラリーマンの楽しみは、会社帰りに一杯やりながら、上司や経営者、会社の悪口を言い合うことだという。
会社を辞めて独立してみると、そういう会社の人間関係がすごくなつかしい、という人もいる。
しかし、私はそういうことがなくなってよかったと思っていた。

それでも、少し前にバイトにしていた人から電話が出てくると、やはりべらべらと喋ってしまう。
最初はいい気になって、人のうわさ話や悪口を言っていた。

会社に勤めていた頃、会社帰りによくみんなで飲みに行って、人の悪口を言ったものだった。
そういう人を肴に延々とお酒を飲んでいた。

みんなで悪口を言うのは、上司だったり、同じ女子社員だったりした。

人の悪口は楽しい。
しかし、何でそんなに悪口を言うために集まってお酒を飲んでいたのだろうか。
本当はその組織や自分の評価や自分の環境に対して強い不満があるからだ。
しかし、その部分は目をつぶって、自分の不満をある一人の人に怒りをぶつけるために悪口をみんなで言っていたような気がする。
だから人の悪口なんて本当は不毛だし、それで何かが解決するわけではない。

もう辞めたバイトなのに、電話がかかってくるとついつい悪口を言ってしまう。
やれやれ。